第2話 絵本とデュラハン

毎日絵本を読む。

『この世界には、みんなに呪がかけられている。でも、人と人とが巡り合い、〈特別な人〉と出会った時。その二人の呪は解かれるのです。』

絵本を閉じる。

お風呂上がりで濡れた髪とごわごわのパジャマ。

この世界では、占いによって人と人が出会うことが多い。

つい最近まで世界の人々は混乱の渦だった。

理由は全てを決めてくれていた偉い人たちがいなくなったこと。

(コーラルがお母さんだったら……)

それは一瞬よぎった考えと罪悪感。

本当のお母さんに申し訳ない。

この村には、近くの町にも言い伝えがあるが。

ある時、黒いお城の王子様が世にも珍しい首無し馬を盗んだことで、その馬の主人たる首無し騎士が村と町、城。すべてを彷徨い歩いたという記録がある。

その時に、出産中のミケの母は、恐ろしいことに、兜で隠された、首無し騎士が小脇に抱えた首の素顔を見てしまった!

あまりの衝撃に出産だけはなんとか終えたものの、生まれたミケの髪は心の傷を受けたように白く、雨の中の水溜りのような茶色と、絶望の黒色を持って生まれてきた。

それがミケの呪。

いつか時が来て、特別な誰かに出会えれば、この髪は、どうなるのだろう。

お母さんの髪の色を知らない。

お父さんは黒。なら、自分も黒か。

黒のお城の王子様が首無し馬を返すまで、首無し騎士はとうとう暴れだし、勇猛果敢なコーラルは片腕を失い、何人かは今もその戦いを覚えている。

いま、ミケは六歳だ。

特別な誰かとは、いつ出会えるだろう。

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