第2話

異世界帰りの米蔵さん88才は今日も懲りずにお散歩中です。

お日様に照らされ近所の公園までの散歩道。歩きなれたその道も、今日もやっぱり新鮮に映ってしまいます。


でも今日は別の目的があるのです。

今日は嬉しい年金支給日!可愛い孫ちゃんにプレゼントを買うために銀行へと立ち寄ります。


米蔵さんが銀行へと到着すると、激しい銃声が鳴り響きました。

米蔵さんは少しお耳が遠いが幸いし、心臓発作にならず済んだようです。今日はラッキーデーたっだようですね。


よく見ると、3人の覆面をしている男が、行員たちに拳銃を突きつけていたようです。

幸い、目の方は衰えていないようで、遠くの方は良く見えました。


「早くしろ!金をあるだけ詰めるんだ!全部残さず詰め込めよ!一枚でも残ってたらぶっ殺すぞ!」


男の一人が叫んだその言葉に、米蔵さんは激しい怒りでまたも血圧が急上昇。

その結果、少し意識が薄れたので、冷静になれたようです。

それでも、このままでは孫ちゃんへのプレゼント代まで持っていかれてしまう!


そう思った米蔵さんは即行動。これは勇者としての基本スキル『悪即斬』の効果でしょうか。


米蔵さんは『隠密』スキルを発動させると、近くのテーブルに置いてあったボールペンを3本取り出すと、素早い動きで3人の手元に向き合って『投擲』します。


「うっ!」「うが!」「ふぁー!」


男たちが手を押さえてうずくまります。

その時です。男の一人が落とした拳銃が、地面に落ちると暴発してしまいました。


米蔵さんは焦った心を押さえながら、銃弾の先にいた女の子へ『疾風の剣』を使い近づくとそのまま指先で銃弾を上へと弾き飛ばしました。

もちろん指先にはちゃんと『鋼鉄化(アイアン)』を使い保護しています。

指を痛めていしまっては、大好きな孫ちゃんを撫でることもできなくなってしまいますからね。大事なことです。


その時、腕の痛みから回復した男たちは米蔵さんに向かって走り出しました。


「このじじー!ふん縛っちまえ!」


米蔵さんを捕獲しようと持参したロープをもって近づく男たち。

男の一人が米蔵さんに飛びつきます。


「残像じゃよ!」


『影分身』を使って難を免れた米蔵さんは、飛びついた男から『盗みスティール』でロープを奪いさりました。

そして『束縛術』を使って動き出したロープにより男たちを縛り上げました。


この技は、異世界で愛し合った女性に使った技だったことを思い出した米蔵さんは、少しだけほろ苦い気持ちになったようです。


無事、銀行強盗を撃退した米蔵さんに、銀行内にいた人たちは拍手喝さいの様子でした。


「おじいさん!お名前は!」


慌てて駆け寄ってきた支店長が尋ねます。


「なーに。名前なんて・・・忘れたよ!」


そう言い残し、颯爽と引き落とし用紙のところへ歩き出す米蔵さん。


その後、持参した通帳をみて辛うじて名前と番号を書き込んだ米蔵さんは、パスワードのところで止まってしまい、無事保護されたのは2時間後のことでした。


その際に、愛する奥様が迎えに来たので、無事年金も引き出すこともできました。

米蔵さんの顔に笑顔が戻った瞬間でした。


めでたしめでたし。

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