剣術大会で予選を勝ち抜く

 翌日、街の闘技場で剣術大会の予選が行なわれることになった。

 会場は古代ローマのコロシアムを小さくしたような感じ。

 会場は小さいながらに人が集まっている。

 参加者は四十人ぐらいはいそうだ。


 審判の説明が始まった。

 予選は三回戦まであって、その後に本選がある。

 相手が降参と言うまで勝負は続く。

 

 予選は、一対一のたたかいになるらしい。

 つまり、くじ引きで選ばれた対戦相手と戦う事になる。

 オレは絶対に本選に出てやるぜ。

「じゃあなカイト。ここでお別れだ。オレは第一ブロックに行く」

「お前こそ、負けるなよ」


 予選の参加者に木剣が配られた。

 ヨーロッパのロングソードを模したものだ。

 この木剣は重いので当たると非常に痛い。

 頭にコブやり傷ができてしまうよ。


 だから、最初は間合いを取りながら闘わないといけない。

 ブッケンハイムでの剣術大会、勝ち残ってやるぜ。


 予選一回戦の相手は筋肉マッチョマン。

 髪は黒で、身長は百八十はある大男だ。

 大男が構える木剣が小さく見えるよ。

「ガハハ、小男が対戦相手か。ひねりつぶしてやるぜ」


 観客からも笑い声が聞こえた。

 耳を澄ませると、小男をやってしまえと言っている。


 審判の手が上がり、戦いが始まる。

 オレは上段に構えて大男の出方を待った。

 大男は木剣をオレの胴体に向けて振り下ろす。


 オレは木剣に力を込めて剣を返す。

 オレが木剣を折ると、大男は少しうろたえたように見えた。

 焦らずに大男の頭に木剣を叩き込む。

「勝者! リュカ・フィリップ」



 一回戦に続いて二回戦も勝ち進んだ。

 カイトは先に三回戦を終えて本選に出ることが決まった。

 オレも負けちゃいられない。

「リュカ。予選突破しろよ。できなかったらシュタルクで修行しろ」

「わかったよ」


 銅鑼どらが鳴って、審判が手を上げた。

 オレは黒髪のおとなしそうな青年と向かい合った。

「僕は炎神流のトリスタン。いざ尋常に勝負」

「オレはリュカだ。負けないよ」


 トリスタンは木剣を上段に構えた。

 おとなしそうな見た目とは裏腹に剣技は荒い。

 正面からバシバシ打ち込んでくる。


 青年は木剣をぐるっと回して首元に突き立てた。

「リュカくん 降参か?」

「いいや。またまだ」


 オレは剣を払いのけ、木剣を正面に構える。

 トリスタンの口元が笑った。

「いい度胸だ。僕は手加減しないよ」

「わかってるよ」


 互いに剣を振るうとバインド(鍔迫り合い)が起こった。

 剣から伝わる圧力が強い。

 オレは剣を押して引いた。


 彼はニ本指のジェスチャーサインで挑発してきた。

 だが、オレはその流れに乗らないぞ。

「なら、こっちから行こう」


 トリスタンは木剣を上段に構え、揺さぶりをかけてきた。

 オレは中段の構えで待ち受けたが。

 オレに構わずにまっすぐ突っ込んでくる。


 それはオレが剣が振り下ろすのと同時だった。

 トリスタンは鋭い蹴りを繰り出してきた。

 オレは派手にふっとばされ、床に転がった。


 オレの気分は最悪だ。

 まるで天下一武闘会で格上に挑むモブキャラの気分。

 さらには勝ち目がないと観客から言われている。

 諦めるものかよ。


 膝を立てて立ち上がり、床に転がった木剣を拾う。

「第2ラウンドだ! 」


 オレは剣を上段に構える"屋根の構え"を取った

 剣をトリスタンに向かって振り下ろす。

 だが、彼の華麗な剣さばきで届かない。

 あと、もう少しで届きそうなのに。


 剣を受け止めた衝撃で先端がボキッと折れた。

 剣の先端が折れてしまったんだ。

 これでオレは突き技を封じられた。

「あぁ折れた!」

「まだやるのかよ。いい加減降参しろよ」


 トリスタンは呆れた顔で降参をうながした。

 でも、一度決めたことは諦めねぇ。

 それがオレの剣術人生だ。


 オレは剣先をつかみ、柄頭による打撃攻撃を敢行した。

 必殺の殺撃がトリスタンの頭に当たる。

 トリスタンはドスンと音を立てて崩れ落ちた。


 審判が手を上げた。

 オレは勝利を収めた。

「勝者! リュカ」



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