2-3 魔法の使い方 3

 「では、まずは私がお手本を見せましょう」


 そういって、セレナルは、二人をドアの方に移動させた。彼自身は部屋の中央の方を向いて、右手を向けた。二人には何に手を向けているのかわからないが、彼はそのまま、何かを呟いた。


「土よ。クレイウォール」


 セレナルがそう唱えると、訓練場の砂から土でできた壁が生えてきた。そして、それは天井に届いたところで止まった。セレナルは、二人の方へと振り返る。


「これが魔法です。簡単な魔法で土の壁を出現させるというものです。よく防御に使われる魔法なので、覚えておくべき魔法ですね。それにこの壁の大きさを変えて、足場にすることもできますね」


 二人はそれを見て、龍樹はその魔法をすぐに再現できると思ったが、小鳥はまだ魔法を使ったことがないため、すぐには魔法の使い方を理解はできなかった。しかし、二人とも元の世界では漫画やアニメのオタクである。次元の壁の向こうの技術であったはずのそれが今目の前にあるということに興奮していた。特に小鳥は両手を握り、小さく上下に振りながら、その顔には早く自分も使いたいと書いてあった。


「大丈夫です。すぐに使えますよ、小鳥さん。まずは想像からです。この土の壁の起点は地面から土の魔気を上に上昇させるところからです。上昇した土の魔気が土の壁を形成して、地面から伸びて上へ移動させて、どこまで大きくするのかを想像して、その大きさが固まったら、それがその魔法の結果の部分になります。どれだけの時間そこに残しておくのかというのを考えると、その時間通りに消すこともできます。とりあえずは、すぐに消えるように想像してみてください。想像しながら、土の魔気をしてして、魔法の名前を詠唱します。この魔法はクレイウォールといいますので、それを口に出してください」


 セレナルの言葉はゆっくりであったが、小鳥にはその記憶しておくのは難しいようだった。龍樹もセレナルの言葉を聞いていたが、彼にとってはセレナルの解説とは多少異なる。しかし、彼は先生の言うとおりにしようと考えていた。


 セレナルと同じように、手を前に出した。土の壁ができる工程を想像した。その瞬間、彼が詠唱する前に地面に土の壁が出現した。彼は高さも存在する時間も想像してない。彼は驚いて、想像するのをやめた。すると土の壁は崩れて、小さなかけらになり、さらに小さく塵のようになって消滅した。たった今、魔法を教えてもらった彼にはその現象を理解することができなかった。


「なるほど。すごいですね。魔法をキャンセルすることができるというわけですか」


「どういうことだ? 俺には魔法は維持できないのか」


 セレナルは彼の魔法に興味を示していたが、龍樹は目の前で魔法が崩れ去ったことを魔法が失敗したと考えているようで、うつむいてしまった。


「いえ、魔法は発動していますよ。貴方は魔法を途中でやめることができるんです。おそらく、貴方の超能力が作用していると思うのですが……。そうですね、魔法を完成まで想像してみてください。この壁ではなくもっと小さいものでお願いします」


 龍樹は先生の言うとおりに魔法を使用する。彼が想像を始めると同時に魔法が発動して、大きさも彼の想像する通りに大きくなって、彼が想像の中で高さを上げるのをやめると、現実とリンクして土の壁も成長を止めた。そして、彼はその壁を完成形だと認識すると、彼が想像しなくても土の壁は維持されていた。


「どうですか。私の教えた魔法の原理を多少無視しているとは思いますが、魔法はkのように完成しています。これはただの推測ですが、龍樹君の魔法はあなたの想像通りになるというような超能力だと思われます。つまりは、他の人が魔法を使うより早く魔法を発動でき、他の人よりさらに自在に魔法を使うことができるということですね。魔法が好きな私からすれば、かなり羨ましい超能力です!」


 セレナルは途中から、彼に詰め寄るような勢いで話し、龍樹の超能力が素晴らしいものだといっているのが龍樹には理解できた。理解できたのはそこまでで、自身の超能力の細かい能力は全く分からなかった。


「お兄ちゃん、すごい! わ、私も……!」


 小鳥は龍樹の出した土の壁を見て、自分も同じように魔法を遣おうとしていた。彼女は龍樹とは違い、セレナルの言った通りに魔法が発動するはずだ。彼女は思考ではなく感覚で魔法を使うことにした。幸い、彼女は物語オタク。魔法を想像するためのネタには困らない。土を壁を作り出すという魔法はいろんな物語で登場するのだから、それと同じように想像すればいい。


「土よ。クレイウォール!」

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