樹の下に桜の足跡
心愛 編弥花/kokoa ayaka
プロローグ
私は、風景を眺めながら歩くのが好きだ。だから誰かと一緒に歩くよりも、一人で歩く方が好き。ついでに言っておくと、一人の方が楽だからというのも理由のうちだ。
人と関わるのがどれだけ面倒なことか、それは中学の頃に痛感した。
…と、つい嫌な記憶のことを思い出してしまったが、直ぐ様はっと我に返る。
過去の嫌なことを振り返るのは、いつもの悪い癖だったりする。
こういうのも、正さなきゃな…などと考えているうちに、無意識にいつもの如く空を眺めていた。
空は綺麗だなぁ…。
日によっても天気によっても違う顔を見せてくれる。人を飽きさせない魅力がある。少なくとも私はそう思う。
周りの人は景色よりも、友達とお喋りしてばっかだし、直ぐにでも彼氏を作ろうとする。私とは正反対だ。
だから、例え趣味が同じだとしても同じなのは側だけで具体的な趣味は全然違う。
お互い、音楽は好きだけど好きな曲のジャンルが違うようなもの。
もっと言えば、好きなジャンルは一緒なのに好きな曲の趣味が全然違うようなもの。そんなの、意見の食い違いで"モヤモヤ"するだけに過ぎない。
まぁ、"嫌なこと以外"もちゃんとあるにはあるが。
…でも私にとってはそれが辛い。なによりも、"モヤモヤ"と"嫌なこと以外"がごちゃ混ぜになって気持ち悪い。
こんなの飴と鞭にしか思えない。
だから私は逃げた。休み時間はなるべくその子と接しないようにずっと自席で読書をしていた。
今年もそうやって乗り切るつもりだ。なるべく、人との関わりを避けよう。
…でも本当にこれでいいのかな?
―そうしてモヤモヤしつつも、今日も平和な一日が幕を開ける…はず―
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