「3バズり」リスナーさんが優しい人達ばかりだった

 ──ワンコ写して

 ──なんでこんなところにいるの?

 ──ハンサムでシュッとした見た目してるな

 ──よく死なずにすんだなぁ

 ──ダンジョンに動物保護を求めるのは間違っているだろうか?


 このワンちゃんを拾ってから、コメント欄の盛り上がりがすっかりそっちの方に引っ張られてしまった。前のように服を脱ぐことを要求するような投げ銭は無くなり、代わりに「ワンちゃんのおやつ代に使って!」とちょくちょく投げ銭が来る。他には何故か犬の買い方が詳しく纏められているサイトのリンクが載せられたりしていた。


「えっと、あの……ありがとうございます」


 ──いいのいいの

 ──なんか、いつもの企画より面白いな

 ──里帆ちゃんのほうが可愛くね?

 ──うんうん、ブスのいじめ配信よりずっと面白い


 いい人たちだなぁと思った矢先に、座間さんへの不満がちょくちょく流れてきた。コメントを流し見していくと、どうやら彼女は私の他にも沢山の人をいじめ、その様子を動画として投稿していたらしい。中にはおばあちゃんの杖を奪って、壊したりするようなひどいものもあった。──その時初めて、私は座間さんへの怒りを煮やした。


 ──ところで、ワンちゃんの名前は何にするの?

「えっ」


 一件のコメント、それが引き金となった。


 ──シロタとか?

 ──無難にポチ

 ──モチ助だっ!


 急にコメントが激流のごとく流れてきたため、反応することもできなくなってしまった。ってかあれ? 視聴者数100人!? よく考えればこれバズってるのでは? やった、これで殺されずに済む!


 ……くぅん。

「あっ、そうだね」


 そうだ、そんな事を気にしている場合ではない。今はこの子の傷をどうにかしなければ。


(といっても、どうすれば……)

 ──あれ、そこに部屋があるぞ


 タイミングよく、一件のコメントが耳に残る。辺りを見渡すと、そこには確かに部屋があった。色々考えていて気づくことが出来なかった。


(宝箱とか、ありそうだな)


 ──取り敢えず、中をそろりそろりと見るのじゃ

 ──最下層の魔物は全力ダッシュで逃げれるぐらいのやつしかいないはずだから、いざとなったら頑張って逃げて!

 ──「ゾウさんが投げ銭しました《5000円》」生き延びたらこれで自分をお祝いしてあげて!


 温かいコメントの数々、時々来る投げ銭……それが私の心を温め、同時に奮い立たせた。

 意を決した私は、部屋の中へと足を踏み入れた。そこは一本道だった。特に罠がありそうな気はしなかった……しかし、私は最大限の警戒をしながら、その奥へと進んだ。


「……あっ!」


 進んだ先は行き止まりだったが、そこには探し求めていた宝箱があった。──問題は、それが三つあるということだが。


(どうしよう、こういう時って大体一つが正解で、残りは全部ミミックか罠が仕掛けられてるんだ……!)


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