第一章 メサイア計画1

 私の名前は、羽柴シズナ! 花の女子大生! いいよね! 大学生!

 人生の夏休みともいわれる大学生。、学校内で専門的な知識を学ぶもよし、学校外で見分を広めるもよし、ひたすらお金儲けに走るのもよし。『自由』それが大学生の特徴だ。もちろん必須単位を取っている前提だけどね! 

 荘厳な入学式から早一ヶ月。私が選んだ道は、


「サークルだー!」


 スパァン!とテニスボールを相手コートに向かってサーブを打つ。打ったらすぐに真ん中へ。そして相手の動きに合わせての初動を意識する。


「いいぞ! 羽柴! いいボールだ!」

「ありがとうございます!」


 私が所属しているは、『テニスサークル』だ。大学生活を楽しむ上で、テニサーには必要なものが、大体詰まっている。多い飲み会、幅広い人間関係、そして沢山の女の子! 


 最高だ!

 

「隙ありだ! 羽柴!」


 ドウン!! ガチャン!! シュウウ……

 オォー!とオーディエンスが沸く。

 ……フェンスにめり込んでるぞ……。


「流石ですね! 北村先輩!」

 

 一応言っておくと、よくテニサーは淫らだと誹りを受けるが、当サークルはいたって健全。

 どうやら、ここ『葉佐間はざま大学』は数年前にサークル関連で不祥事があり、サークルへの監査が大変厳しくなった。しかし、それでも新入生歓迎会でのアルコールハラスメントや、お持ち帰りが発生していた。

 そこに、一種の罠としてテニサーが存在する。淫らな考えを持った人たちは、なぜか、テニサーに集まる傾向がある。そこで、ノコノコ集まった淫らな輩を、テニサーの先輩方がスピリタスで潰す。(アルコールパッチテストはやってるよ! やるだけだけど!)結果、軟派なことをする間もなくサークル内の風紀は守られている。

 ちなみに北村先輩は三年の男子学生で身長百九十センチの体重百キロオーバーの怪物だ。通称、葉佐間の赤鬼。噂によると婚約者までいるらしい。怪物め。


「また、腕を上げたな羽柴!」

「ありがとうございます。あまり実感ないですけどね」

「いや、とても大学から始めたとは思えんぞ。こんな短期間で俺に食らいついてくるとはな。このまま続けていると、葉佐間大学の柱になるかもな」


 自分の名誉のために言っておくと、私は誘われてテニサーに行っただけで、罠にはかかっていないよ! 女の子が目当てではあったけど……。 目の前で筋肉ムキムキの男たちが野球拳をし、お酒の平均アルコール度数が二十パーセント越えのラインナップに怖気づいた。そのままお酒をあおり、なし崩し的にテニサーへ。


「羽柴ゾーンでも練習しておきますよ」


 はっはっは。と笑っていると、チャイムが鳴る。どうやらもう五時らしい。一部地域ではパンザマストというらしい。

 

「おっ、パンザマストだ。じゃあな羽柴、最近物騒だから気を付けて帰れよ!」

「お疲れ様です!」


 そういうと、北村先輩は第二駐車場に向かっていった。


 さて、どうしよう。もう家に帰っても一人暮らしなので誰もいない。せっかくなら、別の先輩に声を掛けて居酒屋でもと思ったが、仲のいい先輩は今日がバイトだったはずだ。

 ……そういえば、海辺の近くに新しい角打ちがオープンしたらしい。

 そう思うと、私は第一駐車場に向かった。高校に受かった時に買ってもらった愛用の自転車にまたがり、海へと向かった。



 

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