第20話 発現
樹海を奥へ奥へと進むにつれて、辺りは異様な空気に包まれていった。この空間には三人以外に何かが潜んでいる気配を葵は感じていた。
「近づいて来ている」茜の声が頭の中で聞こえた。それは耳から入ってきた言葉ではなかった。葵は頭の中で質問した。
「何が近づいきているの」「成仏出来なかった霊魂が彷徨っている」先を歩いている向日葵は何も聞こえていないのか歩みを止めなかった。その時、向日葵の周りに無数の霊魂が彷徨っているのがはっきりと見えた。
「葵、はっきりと見えるようになったのね」向日葵の声が頭の中で聞こえた。
「ああ、はっきり見える。茜もはっきり見える」
「葵、ここにいる霊魂は普通の人間には見えないし、危害も加えない。でも葵と向日葵を追って来ている奴は違う。とても邪悪で危険な存在よ。奴に立ち向かうには葵の力が必要、その能力を発現させなければいけない」
「茜、久しぶりね」「母さん」葵は向日葵と茜が抱き合っている背後の地面が盛り上がるのを見逃さなかった。
「母さん、茜危ない」溶岩を割って出て来たのは腐臭がする醜悪な人間の形をした物だった。剥き出しになった鋭い歯で二人に襲いかかろうとしていた。茜は向日葵を突き放すと異形に向けて、左手指先から赤い光を放った。同時に葵も右手指先から紫色の光を放っていた。
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