元カノと客室で

//ドアの開閉音


;;正面遠め


「おかえりー後輩くん」


「うん、ついさっき終わったところだよ」


「それよりもごめんねー、買い出し任せちゃって。お酒重くなかった?」


「ほんとはふたりで売店に行く予定だったのに……ほんとごめんね」


//歩く音


;;正面近づく


//ビニール袋をテーブルに置く音


「まさか親から掛かってきた電話があんなに長引くとは思ってなくて……」


「うん大丈夫。大学の女友達と旅行に来てることになってるから」


「いや……まぁ、明らかに疑われてたけど……だからって正直に言えなかったよねぇ……元カレと旅行してるとか」


「疑われた理由? んー……後輩くんには言いたくない、かな」


「あれ? あっさり諦めるんだ? てっきり追求されるかと――」


「――違いますー! 追求されたい訳じゃないですー!」


「くすっ」


「でも、そうだよね。付き合って貰ってるんだから隠すのも悪いよね」


「……電話口で『後輩くんと付き合ってた頃みたいなテンションだけど、本当は男と行ってるんじゃないの?』って言われちゃったんだよね……」

□困ったような照れたような感じで


「やめて……疑われてるんじゃなくてバレてるとか言わないで……気にしないようにしてたのにさぁ……」


「……はぁ、明日帰ってからが怖いなぁ」


「……ある意味、私の親も知ってる相手だし、そこまで怒られないだろうけど……微妙な顔されるのは間違いないだろうね……後輩くん、付き合ってた頃ウチに来たことあるし……別れたのも知られてるから……今更どうしたって感じで」


「それで理由が理由でしょ? 呆れられたり笑われたりする未来までみえてるんだけど……」


「後輩くんのご両親も同じじゃない? 今回のことがもしバレたら」


「だよね……というか、私は更に友達にも誰と行ったのか追求されるのが確実なんだけど……どうしよ」


「1人で行ったことにしても……絶対にバレると思うんだよね……私、1人じゃ外に出るタイプじゃないって皆に思われてるみたいだし」

□自虐気味に


「そこで不思議そうな顔しないで頷かれるのムカつくんだけど」

□割と本気でイラッと


「まぁいいや。なんとかなるでしょ」


「売店の品揃えはどうだったのかな?」

□わかりやすく切り替える感じで


//袋を漁って中身を出す音


「おー♪ 色々と買ってきてくれたんだ……地味に金額行ってそう……ちゃんと半分払うね」


「いやいや……奢ってもらうのは悪いよ……ただでさえ旅行に付き合ってもらってるんだし」


「大学生と社会人? それを言うなら、先輩と後輩だよ、私達」


「うんうん。そこで男と女とか言い出さない後輩くんは良いなぁ」


「はい今回の飲み代は折半で決定だね」


「そしておつまみはっと……さきいかに柿の種。定番だねぇ……枝豆無いのが意外だけど好みじゃないとか?」


「あーやっぱり。柿の種も豆無しだからそうかなって」


「そして肝心のお酒は……」


「ビールとチューハイなんだ」


「あれ? これ初めて見るかも……どれどれ?」


「へぇーご当地のビールとか興味あるなぁ」


「日本酒とかワインは買ってこなかったんだね」


「私のイメージじゃないって言われると、そうだね。としか言えなくなっちゃうんだけど。実際飲まないし」


「買ってこないってことは後輩くんも飲まないのか……イメージじゃないもんね」


「ふふっ、お返しだよ」


「おっ、私お気に入りの柚子もしっかり買ってあるんだね」


「あれ? 前もって言わなかったはずなのにどうしてわかったの? たまたま?」


「あー……確かに言われてみるとそうかも……後輩くんの前でジュースとか飲む時ってだいたい柚子を選んでたね……無い場合はレモンとかグレープフルーツだね……そりゃ簡単に予想できちゃうか」


「それじゃ早速乾杯しよ♪」

□ご機嫌に


「最初は……ご当地ビールかな」


「後輩くんはどれにするの?」


「ふーん、てっきりビールだと思ってたら違うんだね? チューハイなんだ」


「しかも……桃……意外……でもないのか」


「後輩くん、桃のジュースとか好きだったもんね。あと、りんご。しっかり青りんごのチューハイも買ってきてるし」


「お互いこういうとこは変わってないのかもね」


//缶を開ける音✕2


「それじゃあカンパーイ♪」


//乾杯音(缶


「ごく、ごくっ、ごくっ、ごくっ、ごくっ、ごくっ」


「ん~~~~美味しい~」


「あれ後輩くん? どうしたの? 私の顔になにかついてる?」


「引いてるだけ? なんで?」


「……あー……い、いや、でも……大きなジョッキを一気飲みしたわけじゃないし……350の缶を半分くらいだよ? 普通じゃない?」


「納得いかないなぁ……もぐもぐ」


「このさきいか、塩っ気がちょうどいいね……メーカー覚えとこ」


「ほら後輩くんも食べてみなよ……柿の種も開けちゃうね」


「ぅ……こっちはちょっと辛さが強いなぁ……豆が入ってないからそう感じるのかな?」


「ごくごくごく」


「2本目は折角だし後輩くんが選んできてくれた柚子にしよっと♪」


//缶を開ける音


「ごくっ――やっぱり柚子好きだなぁ」


「友達と飲む時もこんなペース早いのかって?」


「まさかそんな訳ないよ……飲むのって殆どお店でだから、家までの帰路も考えないといけないし……男の子も居るからね。流石にお持ち帰りされる気はないから……結構、自重してるよ? これでもガードは固いつもりなので」


「後輩くんとふたりで旅行してる時点で説得力無いだろうけどね……」

□苦笑気味


「こんな風に飲むのは、自分の家くらいかなぁ……逆に言うと、こんなところ家族くらいにしか見せたことない姿かも」


「後輩くんはどうしてそんなことを訊いてきたのかな? もしかして、心配してくれてるの?」

□期待する感じで


//缶を開ける音


「後輩くんも2本目に行くんだね? タイミング的に誤魔化した感じするなぁ」


「味は青りんごかぁ……ひと口もらっても良い?」


「ありがと――んくっ」


「へぇ~、思ったより癖みたいなのないんだね。悪くないかも」


「……今日は自重しなくていいのかって?」


「うーん……別にいいかな」


「今日は楽しかったから、最後まで楽しく過ごしたい」


「ひとりだけ抑えながら飲むのって案外つまらないんだよ?」


「後輩くんはお酒強いの?」


「普通? そうなんだ」


「私? 私は……強くはないかもね……むしろ弱い側かも」


「あ、大丈夫だよ? すぐ寝ちゃって翌日には残らないタイプだから」


「……危ないタイプ言わないで。だから友達と飲む時は自重してるんだって」


「そんな訳で、もしものときは後輩くんがベッドに運んでくれると助かるな♪」


「さ、今日の思い出話でもしながらどんどん飲もっ♪」


end

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