9🏡哲平の煩悩💓

オカン🐷

第1話 🎒ルナのランドセル

「ルナちゃん、お帰り。サーモンピンクの素敵なランドセルね」

「ヘヘヘッ、牛窓のおばあちゃに買ってもらった」

「良かったわねえ」


 ルナはランドセルの肩紐に手をやり、後を覗いて見た。

 レイがソファーの上であやしている女の子に目をやった。


「オトちゃ、ただいま」

「ウーちゃ」


 ルナの方に手を伸ばしてきたが、ルナは手を洗ってないことに気づき慌てて手を引っ込めた。


「オトちゃ、またあとで遊ぼうね」

「上にお披露目に行くの?」

「うん、今朝おにちゃたちに早く行くよって、見せる時間なかったの」




 ルナは階段を上がって行った。


「哲おじちゃ、見て、見て」

「おお、ランドセルか、もう小学生なんだなあ」


 哲平は感慨深げに呟いた。

 エレベーターの昇降音がした。

 ナオがシフォンケーキの載った皿をワゴンで運んで来た。


「あら、ルナちゃん帰ってたん? 帰ったらまずママにただいまして。そやないとママ寂しいやん」

「ママ、ごめんなさい。朝ランドセル見せる時間なかったから」

「あら、そう言えば、おにちゃたちと一緒やあらへんの?」

「うん」

「おにちゃたちルナを待ってるのと違う」


 ナオがエレベーターのボタンを押すと、


「ママー、待って。まだアクちゃに見てもらってない」

「忘れられたと思ったよ。うん、いい色のランドセルだね」

「エヘヘッ、顔なしさんもモンキーさんもよく見た?」

「うん、見た見た」


 モンキーは雑誌に視線を落としたまま応えた。

 顔なしにいたってはヘッドホンをつけたままで気付きもしない。


「ルナ、ママもう行くよ」

「待って」


 ルナは顔なしの白いヘッドホンを取って耳元で叫んだ。


「わっ」

「ああ、びっくりした」

「寝てたの?」

「ううん、瞑想してたの」

「めいそうってなーに?」

「心を静めて悟りを開こうかと」

「さとりって」

「ああルナちゃん、この話はルナちゃんがあと15歳年とったらまた話そうね」


「ママー」

「ママにもわからへんわ。それより、おにちゃたち学校で待っているんとちがう?」

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