魔法少女のいる日常
第2話 魔法少女の正体
それは平日の午後の出来事だった。
秋口のやや残暑が尾を引く頃合いで、まだそれなりに日は高く、青空に覆われている。
学校の内部では給食やら弁当やらを食べ終えた児童生徒が眠い目を擦りながら授業を受け、社会人達も定時前でそれぞれ職場で仕事を再開し始めた頃合いだ。
突如、爆発音が響いた。
それと同時に純黒の巨体が姿を現した。
それは怪物『
現れたその姿に、周辺の人々は慌てて逃げ出す。通報を受けて駆け付けた自警団体の者達が手慣れた様子で避難誘導を行った。それからサッと手早く規制線が張られ、民間人の侵入を防ぐ役割を果たす。
そうして彼らは、人民の被害を最小限に食い止めたところで
「見つけたっ!」
その声に
「みんな、いくよ!」
現れた純黒の『
×
家よりも巨大な純黒の体躯を持つ『
「はぁっ!」
桃色の
「やぁっ!」
水色の
「えいっ!」
黄緑色の
「はっ!」
紫色の
「たぁっ!」
そして橙色の
これで『
「今だよ!」
橙色の
「「「「うん!」」」」
4人の
そして衣装がより白く華やかなものへと
それはまるで、ウェディングドレスかのような様だ。
眩しそうに目を細め、橙色の
「「「「ミラクル・レインボー!」」」」
そうして『
×
気付けば日は傾き、周囲は夕焼け色に包まれていた。
遠くでカラスの鳴き声や豆腐屋の笛の音が小さく聞こえる。
いまだに残る規制戦の中、
「やっと終わったー」
と、
それから床に倒れ込んでいた『
最中で若い救助隊の者がやや頬を赤らめそわそわしていたので、「がんばってね♡」と水色の
「こーら。そうやって軽々しくサービスしちゃうと勘違いされちゃいますよ?」
そう、黄緑色の
「いーじゃん。別に減るもんじゃないしー」と口を尖らせ、全く意に介していない様子だった。それにやれやれと黄緑色の
「よかった。今回も無事にできたみたい」
と、桃色の
「あなたはいつもちゃんとやってるわよ」
そう紫色の
そうしている合間に、橙色の
規制線のおかげで周囲には一般の人々は近付けないが、その先では興奮気味の彼等がひしめき合っている。
「何を見てるんですか?」
近付きながら黄緑色の
「ううん。なんでもないよ」
橙色の
何かを誤魔化されたらしいと思いつつも、分からないので黄緑色の
と、そこで
「依代の回収も周囲の修復も終わったし、打ち上げしよーよ」
と、水色の
「ごめんなさい、今から塾があるから」
と、黄緑色の
「お稽古事があるのよね」
と紫色の
「妹と約束してるんです」
桃色の
橙色の
「ごめんね、わたしも用事がある」
と提案をやんわり断る。全員が辞退したとなると、打ち上げの計画は意味をなさなくなる。
「そっかー。じゃあ仕方がないねー」
そう、残念そうにしながらも水色の
「じゃあ、先に失礼します」
と、橙色の
「あの子、いつもさっさと帰っちゃうよね」
姿が見えなくなった時、そう水色の
「確かに、そうかも」
「そうですね。打ち上げにも一回も参加してませんし」
と、桃色と黄緑色の
彼女等は花の中高生である。なので、打ち上げといってもいく場所はどこぞのコーヒー店だったりカラオケ店、ジャンクフード店だったりする。だが、あの橙色の
なので、彼女等は橙色の
「まあ、あの子、
そう、紫色の
×
初めの
「……このくらい離れたら大丈夫かな」
と人気のない場所に橙色の
それはパッと見ただけでは窓も何もないただの白い直方体でしかないのだが、
橙色の
そこで、彼女は変身を解いた。
するすると衣類が解けて光となって消え、みるみるうちに身軽になって行く。
それが全て終わった時。そこには少女……ではなく、20代前半の女性が立っていた。
彼女は
「ふぅ、緊張したー」
簡易的な明るい色のシャツと暗い色のスキニーパンツと橙色のスニーカー、と、かなりラフな格好をしている。そして白い箱の中で彼女は溜息を吐いた。
「毎度『打ち上げ行こう?』って誘ってくれるのは嬉しいんだけど、さすがに年齢離れすぎてて申し訳なさで行けそうにないんだよねぇー」
「それに、毎度断るのも申し訳なさがあるし」と、悩まし気に頬に手を充てる。
この箱は、実は
事実、彼女は
「あっと、そうだった」
肩掛けの鞄をごそごそと探り、目当てのものを取り出す。それは薄い板状のもの、ただの携帯連絡機である。
「げ、めっちゃ連絡入ってるじゃん……」
と、画面に現れた通知にやや顔を青くしたあと、時間を確認した。「あ、まだ大丈夫そうだ。今からでも余裕で間に合うなー」と言いつつ画面を切る。
「特売がもうすぐだから気合い入れなきゃね!」
言いつつ白い箱より出た。そしてちょっとだけ急いでスーパーに駆け込んだ。
×
「ふぅ。大量大量!」
買い物を終わらせ、満足気に息を吐く。特売のおかげで欲しいものを安く大量に手に入れる事ができた。実際、特売でなくとも大量に買い込まなければ問題はないのだが。
「今日は何作ろうかなぁ」
帰り道は夕飯の献立について思考する。周囲には悪い気配もないし油断していたって問題はない。
と。
「……何をしているのですか」
そう、声をかけられる。
視線を向けると長身の男が立っていた。シワのない黒っぽい色のスーツを着こなした、黒髪の男だ。だが表情が険しく、周囲の人間も遠巻きに見ている。
「あっ! おかえりー!」
だが、その人物に彼女は躊躇なく声をかけ、小走りで駆け寄った。
「まだ家には帰り着いてませんよ。それに連絡を入れても全く返事もせずに」
「いいでしょ別に。こういう時はそう言うものなの! あと、連絡はあんなにたくさん入れても怖いだけだからね! 忙しかったんだから返事できなかったの」
その男は
二人は、少し前に結婚したばかりの夫婦である。
謎めいた橙色の
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