恐怖の館
ふぅ。正直、ここにはもう二度と来たくなかった。嫌な思い出しかないんだよな。そう呟くフグオは、夜にだけ現れる館の前にいた。何故ここにいるのかというと。
「フィアホールに行くのだ」
マリンの一言にマヤとハルが身を強張らせる。ナナは興味津々でマリンに尋ねる。
「フィアホール?」
フィアホール、通称恐怖の館。出てくるモンスターが骸骨系と幽霊系と屍人系しかいない夜にしか現れない館である。そしてこのダンジョンは、キシャンテの街の北西に位置する丘の上に現れる。ここには嫌な思い出しかない。それはマヤとハルも同じだ。
「この温泉地の近くの丘の上に現れる館なのだ。そこには、マスターが次に人外娘に変えないといけない魔物が2体居るのだ」
「へぇ。この目で見たけどほんとフグオだけ不思議な職業よね」
ナナの問いにマリンが答える。
「マリン、フィアホールを避ける方法はない?」
マヤがダメ元でマリンに聞いている。
「マヤがそんな顔をするなんて、意外ね」
「ナナは、知らないから知らないからそんなこと言えるのよ。あの館はあの館は超危険なんだから!」
ガタガタガタと震えながらハルが取り乱す。
「ハル、私も同じ気持ちよ。あの館だけは、できることなら避けたい」
「どうしたのよ2人とも。そんな顔するなんてらしくないじゃない」
「フグオも行きたくないでしょ?あんな思いしたのに、行く気ある?」
「何々、マヤとハルとフグオは2回目なの?えっ?でもパーティ組んだのって最近だよね?」
「私たちはフグオが勇者ラディッシュだった時にパーティ組んでたのよ。だからあの館のことはよく知ってる。当時は好奇心に溢れて、フグオと挑んだけど、あんな怖い思いはもう嫌なのよーーーーーーーー!!!!」
「フグオ君も同じ気持ちだよね!そうだよね!嫌だよね!」
2人が僕の腕を取り懇願する。そう、僕が嫌だと言うのを待っているのだ。だが、実は嫌な思い出も多いがいい思い出もある。マヤとハルに密着されて、胸を押し付けられたこと。あの当時は童貞だったので、それだけで興奮した。しかしナナの驚きは別の方だった。
「えっ勇者ラディッシュってフグオだったのーーーーー!?!?!?!?!?」
「あっうん。まぁ、それはそうなんだけど」
「いつの間にかランキングから消えてたのよね。そしたら、NPCだったんじゃないかって話が出て、殺されたんだろうって。でもそれがフグオならおかしくない?だってこの世界では、同じ人間が2キャラを作ることはできないわよ?どうして?フグオはできてるの?」
「俺もそれだけはわからないんだけどこのリストバンドを付けて、初めて寝た日にこちらの世界にログインしてて、その時には既に初期化されてて、勇者ラディッシュがNPC扱いになったんだ。で、まぁマヤとハルがケシかけてきたから応戦したら」
「あっさり死んだのよね」
「あの時はマジで焦った。えっ最強の勇者様だよ。死ぬの?って」
「ふーん、フグオとマヤたちは最初は敵対してたんだ」
「あっうん。まぁ、あの時はまだキモヲとか呼んでたし、そのノリで、まぁフルボッコされたけど。その後、そんな私なんかのために5000万もの大金集めるとかそんなことされたら堕ちるわよね」
「私も司の洗脳から助けてもらった時にカッコいいって思って、堕ちちゃったってのは建前で、まぁアッチよね。フグオのビッグマグナムを喰らったら堕ちない女なんて居ないから」
「あぁ、まぁ下手より上手い方が良いわよね」
「なるほど、なるほど、マヤもハルも胃袋ならぬフグオの床上手にやられたのね。ますます、現実世界で抱いてもらえる日が楽しみね」
「ナナは初めてだから優しくしてあげるね」
僕はナナの耳元で囁いた。
「ポッ。そういうところなのかもね」
「勇者様、フィアホールに挑まれると聞いて、参りました」
声が聞こえるところにパピィがキャサリンと立っていた。
「羽陽音様!?なんで風呂階家の御令嬢がここに!?」
「貴方が裏川様ですね。さく。ゴホン。勇者様が貴方のことを許しても私は貴方のことを許しませんよ」
「フグオとどういう関係なの?まさか?フグオ、風呂階家の御令嬢に手を出したの?」
「ババババババ、馬鹿いうんじゃねえやい。ななななな、なんで従妹とやるんだよ!」
「従妹?それはどういうことかしら?」
「ちちちちち、違う。パピィのことは妹みたいに思ってるってことだ。べべべべべ、別に他意はない。他意はない」
「フグオ、アンタ仮にも風呂階家の御令嬢様を妹だなんて、申し訳ありません。申し訳ありません」
「いえ、構いませんことよ。寧ろ、虐めを正当化する方の方に頭を下げられましても安い頭を下げても今はありませんことよ」
「御嬢様、それは嫁を虐める小姑にしか見えませんよ」
「えぇ、お兄様の相手は慎重に選びませんと」
「フグオ、貴方、どうやって風呂階家の御令嬢をここまで籠絡したのよ」
ナナが耳元で囁く。
「ハハハ。なんでだろうね。懐かれちゃったんだよ。アハハハハ」
僕は本当のことを言えないので苦笑を浮かべるしかなかった。とまぁそんなことがあって、このフィアホールの中に入らないといけないわけなんだが、やっぱり玄関までくるとこうして足が竦んでいるのだ。
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