1―12 価値観の違いだろう
時は1週間前に遡る。
その日は散歩にうってつけの晴天だった。普段は仕事で妻の
最近、1語か2語のおしゃべりを始めた
幼稚園で暴れん坊だった
既婚の同僚も似たようなことを言っていたから、きっと夫婦によくある価値観の違いだろう。
そんな結論を出した頃に、
先日ライトブラウンに染め直したばかりの髪が、陽光を受けてオレンジ色に近い色味になる。彼女は地毛がほのかに茶色っぽいため高校生の頃から明るい色に染めていた。
これまで試した中でも、オレンジは彼女の明るさを際立たせるようでぴったりだと
と、夫の視線をくぎ付けにする美人がしかめっ面をした。「ちょっと、終わったんなら早く運んでよ!」
「え? 何を?」
「自分のカバンとか飲み物のケースとか! 一杯あるでしょう! あ、
妻は既に怒りのボルテージが高まりつつあるようだ。
「あ~、ごめんごめん。今、運ぼうと思ってたんだよ」
高校生で付き合い始めた頃から、彼女は機嫌を損ねると長引くタイプだった。子供を産んでからは、彼女の愚痴そのものが増えた気がする。こちらがのんびり寝ているぐらいのささいなことで怒ることもあった。
屈託のない笑顔でよくしゃべるのが可愛いのに、膨れっ面で悪態をつくばかりになっては台無しだ。
速やかに荷物の運搬を済ませると、
愛する妻が
父が「しゅっぱーつ!」と声を上げてアクセルを踏むと、後部座席の
交通量の多い道路でも、みんなで歌いながらだと運転が楽しかった。
「ちょっとコンビニ寄ろう、トイレ行きたい」
「といれ? ここにあるの?」
「そう。あのマーク見えるか? あのマークがあるお店にだけ、トイレがあるんだよ」
「おやつ、かう?」
出た。コンビニに寄ると必ずお菓子をねだられるのも恒例だ。
安全運転に努めながら自宅から
「これも!」
「自分で持って来たんでしょ! 自分で持ちなさい!」
「まあまあ、いいじゃん」
「
「いるよ! あとガイアとゴジラも!」
ゲームも好きだが「携帯ゲームにハマると体を動かさなくなりそうだ」と考えて買っていないため、家で
「お父さんと手をつないで!」
今にも
「そんな引っ付かなくていいだろ」
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