志波 晴夏 八月十日午後二時三十一分。

福井駅について、駅そばを食べた。

だいたい五百円くらいで食べれる、そこそこの味のそば。

好きでもないけれど、嫌いってわけでもない。


ただ、食べることで福井に帰ってきたと思える。


足音と人の声、お椀越しに伝わってくる暖かさ。

それらを打ち消して、静かな空間を心の中で作る。


半径ゼロセンチメートルのパーソナルスペースを作って、好きでも嫌いでもないそばをすすっている。


「味覚は最初に覚える感覚、次に指先と音。」

「え?」


耳元で誰かが、そう言ってきた。

私のPSパーソナルスペースを貫くように、直接的にそういった。


それは、幼い少女の声で

それは、優しい声。


私は、声がした方に顔を向ける。

会社の休憩時間であろう、サラリーマンの背中が二つあるだけ。


幼い少女何てそこにはいなかった。

疲れているのだろうか。

慣れない環境で、勉学と仕事にを過ごしていたから……

帰ったという実感で、幻聴を聞いたのかな?


不思議なこともあるんだなって、思ってそばを間食した。

気にも留めない……


「一人暮らしを始めると、独り言とか幻聴が増えた」

も確か、そんなことを言ってた気がする。

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