第160話 第六師団中隊長ゴーディ04

 これは攻めにくくなったな。

 八本剣が弱兵を装うなんてこと考えていなかった。

 普通この場合、八本剣を目立たせて俺たちの足止めをするのが定石だ。

 それなのにどこに八本剣がいるかわからなくするとは。

 歴史書でも、絶対負ける戦をひっくり返してきたコウメイという軍師。

 そいつの作った国だ。

 今もそれに匹敵する軍師がいるのか?

 俺は考えを巡らせる。

 その俺の目の前にまた新しいイレギュラーが現れる。


 色とりどりの法被を着たやつらが中央に出てくる。

 そいつらは『わたしは八本剣』とか書いたタスキをしている。

 あの〇ンキホーテで売ってる『わたしが主役』とか書いたパーティグッズのようなやつだ。

 その上、二人はおっさんだが、あとは女、子供、老人だ。

 その上5人しかいない。

 そんなので、八本剣って信じると思っているのか。

 ふざけた奴らだ。

 いくら俺でも頭に来る。

 いますぐに蹴散らしてやろうか。

 いや、待て、これも作戦かもしれない。

 もしかして深読みを狙っているのか。

 全然わからない。

 

 しかし、ここで引くという戦略はない。

 とにかく、本隊に伝令を飛ばして、こいつらの力を少しでも見抜くことが必要。

 ゴードンだって見掛け倒しだった可能性もある。

 あいつと一緒に戦ったことはないんだからな。

 とりあえず乗ってやろう。

 やつら全員が強いわけはないからな。

 とりあえずこのふざけたやつらを一蹴して、我らの力を見せてやろう。

 俺は側近に声をかける。

 こいつらは今まで一緒にやってきたやつらだ。

 こいつらの力は俺が把握している。

 こいつらが負けるようなことがあれば逃げる。

 そして、本隊に合流し、数で潰す。

 軍隊との闘いでは個人の力なんて知れてるからな。


 代表戦といこうか。

 もし勝ったら勢いはつく。

 あいつらが本物だとしても、そんなに無様な戦いにはならないだろう。


「俺はガニア帝国第六師団中隊長のゴーディだ。

 おまえらが王国八本剣か」

 俺は騎馬のまま八本剣の方に行って呼びかける。


「ああ、そうだ。

 ここに書いてあるだろう」

 がたいのいいおっさんがタスキを伸ばして見せてくる。

 だから、そんなの信じるわけないだろ。

 

「じゃあ、誰から行きましょうか」

 串刺し公ファーゴが俺のとなりに来て話かける。

 そのまわりには俺の頼もしい仲間5人が集まっているのだった。

 


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