28・プレイボール
壁の向こうにぼんやりと見える限りでは、とても大きくて窓がない、倉庫のような四角い建物がいくつも並んでいた。
これはデータセンターだな、とドラコとアキラは言っておたがいうなずきあった。
あそこの建物の中に、データが全部入っているの、と、小春は聞いた。
全部はちょっとさすがに無理なんじゃないかな。
つまりいくつかあるデータセンターの、比較的地上に置いといて、点検とか修理が簡単になっているようなやつだと思う。
とりあえずこの壁を突破する方法を考えてみたい、と、ナツミは言うけれど、4人の中でいちばん力があるアキラがバットで叩いても、ヒビも入らない。
アキラは用意しておいたテニスラケットと、テニスサイズに大きさと重さを変えさせた遊び玉で、壁打ちをしていた。
下のほうから1メートルぐらいずつ高さを変えていくと、はね返る角度が次第に上のほうになるのがわかる。
つまりこの壁は、垂直ではなくてゆるく婉曲している、ただのドーム型というわけではなく、上のほうの構造は、下よりも薄い。
この壁、ドラコには登れないの、とコハルが聞いたら、おまかせあれ、と、ドラコは両手両足の爪を、しゃきーん、と伸ばした。
3メートルぐらい登ったら、もう無理、ということでずるずると落ちてきたけど。
やっぱり遠回りだけど迂回しませんか、と、ミユキは提案した。
問題点はふたつある、時間がすこしかかる以外にも、ね、と、アキラは言った。
まず、この壁は迂回するほうの道まで続いている可能性が高い。
データセンターは、地図で見ると丘の上の、かなり広い面積に数十棟建てられているから。
ただ、出入り口のような、トラックが出入りできる検問所はあるだろう。
そこにいるキカイに、おれたちはセンセイに会いに行くので通してください、と言えば通り抜けられるんだろうけどねえ。
ドラコに関して、キカイはたぶん納得しないだろう。
*
口から炎を吹くとかできないの、ドラコ。
そのための燃料が体内にあればできる、のですが、ここからガソリンスタンドまでは遠いはず、です。
巨大化して、腕力でぶちこわす、とかは。
自治長室では部屋の制限があった、のですけど、ここだったら10メートルぐらいになるのは余裕、です。
ただし、そんなに大きくなったままではいられません、ですよ。
せいぜい10秒ぐらい。
そして、4人とドラコは、壁ドーム突破のための案・作戦を考えることにした。
*
すべきなのは、10メートルぐらいの高さに、それなりの速さで、それなりの硬さのものをぶつけること。
そのあたりぐらいだと、壁は明らかに、地表に接している部分の10分の1ぐらいの大きさに見えたのだった。
必要なのは、ボールとバット。
そうそう、もうすこし小さく、それじゃ小さすぎてピンポン玉だよ、うん、そのくらい、と、ナツミはドラコが入った紺色の玉に指定していた。
あと、縫い目がないとね、野球のボールの縫い目は……そこまで細かく決めなくても問題ないか。
じゃ、プレイボール、英語で言うとセット・アップ。
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