第二章 ~蒼穹覆う黒の迦楼羅天~
新エリアへ、突☆撃!
さて、今日も配信していくんだけど……今回はいつもと違って鬼幻城の一室からスタートだ。それも、畳の上で正座スタートである。
別に謝罪動画とかそういうのじゃないよ?
謝罪が必要なことはやってない……はず。
とりあえずカメラを起動し配信をスタート、そして両手を揃えて深々とお辞儀。
・見てます
・カローナ様が……頭を下げた……?
・テンション高くないの珍しい
「という訳で、登録者数50万人突破ありがとうございます! えー、皆さんのおかげで、いつの間にか登録者数が50万人を突破しておりまして、この動画でお礼を申し上げたいと思います。ほらほらカグラ様も!」
「な、なんじゃ急に」
「ほら、カメラに向かってお礼言って!」
「あ、ありがとう、なのじゃ?」
「と、カグラ様も嬉しそうです! カグラ様、ありがとうございました~」
「?????」
・それでお辞儀スタートなのか
・おめでとう!
●オルゾ・イツモ:[¥50,000] 自分のことのように嬉しい
●ロッケン:[¥50,000] おめでとうございます!
・50万超えるの早すぎん?
・戸惑ってるカグラ様も可愛い
・のじゃロリ和風幼女可愛いな……
「あ、オルゾ・イツモさん、ロッケンさん、スパチャありがとうございます! それにこの前のPKerとの件、その節はお世話になりました」(深々)
・アネファン始めてから一気に登録者増えたよね
・お役に立てたのであれば光栄です!
・あ、もうカローナ様に名前呼ばれるだけで最高です……
・あ? お前らもしかしてアネファン内でカローナ様と接触した?
・戦争案件じゃね?
・セレスちゃんの配信の奴だろ、カローナ様がPKに襲われてセレスちゃんがブチ切れたやつ
「そうそう、ゴッドセレスさんにも助けてもらって……って、なんでそんなこと知ってるんです? ……もしかしてあの大立ち回り、配信されてました……?」
・配信されてたよ~
・セレスちゃんとカローナ様の共闘? ってことで再生数が300万超えてる
・セレスちゃんのマジギレも珍しいからな
・コラボ配信も待っていますわよ!
・↑本人登場?
「マジですか……いや、まぁ別に気にしてないんだけど……。時々コメントにセレスさん来てません? というか、私の配信で毎回コメントしてますよね」
・べ、別人ですわよ、おほほほほ
・バレバレで草
・配信者勢トップクラスのセレスちゃんが見てるってのでカローナ様が如何に注目されてるかが分かるな
「えー、コラボに関してはまた考えておきます。まぁ、ゴッドセレスさんにはお世話になりましたし、前向きに検討したいのでご連絡いただければ……」
・承知しましたわ!
・お、マジでコラボ配信現実化する?
・今から楽しみで仕方ない
・俺の財布よ、もってくれよ……
「さて、50万人突破記念の挨拶はこれぐらいにしておいて、この後はレベリングと素材集めに行きたいと思います。実はですね、例のプライマル関係のクエストでボッコボコにされまして……」
・カローナ様がボッコボコ?
・カローナ様って相当PS高いよな?
・Mr.Qからプライマルの続報が無い時点で難易度お察しだろ
「そんなわけでしばらくはレベリングに勤しもうかと思います! 折角【アーレス】も突破してますし、今回は初めて行くあの場所で」
♢♢♢♢
——【
広大な【魍魎跋扈の森】の一部でもあるこの樹海は、第三の街【ユピテル】に程近い中級者向けのステージである。
ここに潜むモンスターは全て昆虫。チョウにハチ、カマキリ、クモ、カブトムシ……そういった現実でもお馴染みの昆虫がアネファン運営によって魔改造され、さながらリオのカーニバルの如く派手な構造の色彩に身を包んでこの樹海に溢れている。
赤、白、黄色……様々な色の花々が咲き乱れ、それに擬態するかのように昆虫も様々な色を備えた結果、ゲーミングカラーとも言えるほどにこの樹海は色彩豊かだ。
故に【極彩色の大樹海】。
多くの素材が採れるここは、中級者から上級者まで、ほとんどのプレイヤーが足繁く通うステージである。
カローナも例に漏れず、【極彩色の大樹海】へと訪れた。噂によると、強い魔物も存在するため一定以上の戦闘力を要求されるがその分経験値は良く、採れる素材は売ってもよし加工してもよしの優れものらしい。
素材を求めて来たと言うのが半分。もう半分はと言うと……
「敗けてばっかでむしゃくしゃした腹いせに、乱獲させてもらうわよ……!」
樹海の中は草木が鬱蒼としているが、木々の隙間から漏れる太陽の光が色彩鮮やかな草花を照らし、幻想的な景色を造り出していた。
そんな景色とは裏腹に、『ギチギチ』だの『ギョワァァァ』だの、パニック映画によくありそうな怪物のような鳴き声がどこからか聞こえてくる。これだけでSAN値が削れそうだ。
「アネファンの凄さは十分理解したはずだったけど……改めてみてもすごいわね」
鳴き声とともに感じる、何らかのモンスターの気配。姿は見えないのに
ブブブブブブブブッ
おっと、あれはカナブン?
ここでの初めてのエンカウントはどうにもパットしないカナブンだった。
いや、別に何でもいいんだけどね?
じゃあ早速、楽しんでいきましょうか。
私の頭上を飛んでいったのは、バスケットボールぐらいのサイズはありそうなカナブンだ。
背中側は見えないが、見上げたお腹側には赤や緑の鮮やかな模様があったから、きっとすごく綺麗な色をしているのだろう。
指で作った輪っかを覗き、カナブンを鑑定する。
————————————————————
名称:オオオニコガネ
Lv:25
————————————————————
おぉう、カナブンにしてはなかなかの強さ。
そんなカナブンに先制攻撃……することもなく、私は静かにその後を追いかけた。
カナブンの生態上、主食は樹液か何かになるだろう。つまり、このカナブンについていけば———
「やっぱり、予想通りね」
———カナブンを追いかけた先、私が両腕を広げても足りないほど巨大な樹の幹には、カブトムシをはじめ多くの昆虫系モンスターが群がっていた。
さて、どこから手をつけたものか……おっ?
大木の端で樹液を集めていた
気付いた時にはすでに遅く、倍は体格差があるオーガヴェスパの一撃でミツバチはポリゴンとなって消滅し、ドロップアイテムであろう腹部分の蜜袋だけを残して消えていった。
オーガヴェスパはその蜜袋を拾いに行き……突如として横から迫った攻撃を瞬時に避ける。そこには、赤や黄色、紫といった毒々しい色彩のカマキリ———『ホウオウカマキリ』が二本の鎌を広げて待ち構えていた。
そんなカマキリを邪魔だと感じたのか、大木の真ん中を堂々と陣取っていたカブトムシ———『メガロヘラクレス』がついに動き出し……
突然始まったムシキングバトルに、私は正直言って引きまくりだ。ゲーム内だと分かってるから平気なのだが……正直虫は苦手な方だ。素材のためだから割りきるけどね。
ドォォォォォォンッ!!
メガロヘラクレスがホウオウカマキリに自慢の角を叩きつけ、爆発もかくやという轟音とともに大木全体を揺らす。
同時、私の頭の中で戦いのゴングが鳴り響いた。
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