第19話

 バースとアリス、リリスが去った後の図書室に僕はサーシャとクレアと共に残っていた。


「……むむっ。難しいですね」

 

「まぁ、一朝一夕で出来るものじゃないからね。気長にやっていくしかないよ」

 

 図書室で僕はサーシャと共に彼女の戦闘方法についての研究を行っていた。

 サーシャは実に珍しい二重属性持ち。

 それを活かすオリジナル魔法の開発や相性の良い両属性の魔法について、二人で研究しているのだ。

 成果としては結構順調だ。


「そうですね。まだここに入学してからそこまで時間も経っていませんですものね。焦っても仕方がないですよね」


「うん、そうだよ。というかまだ半年もないのに目指すべき場所が見えてきている方が凄いんだよ」


「これもノームくんが手伝ってくれているおかげです」


「一番はサーシャが頑張ってくれているからだよ」


「……ふふっ。ノームくんが褒められるとやっぱり嬉しいですね」


「……うんがっ!?」

 

 僕とサーシャが言葉を交わしていたところ、突然舟をこいでいたクレアが体を震わせ、大きな声を上げる。


「……寒い」

 

 そして、体を震わせる。


「……あれ?クレアちゃん、その目はぁ……」


「よっと」

 

 僕はクレアを持ち上げ、自分の膝の上に乗せる……瞳が赤く染まっているクレアを。


「知っている?クレア」


「……ん?」


「愛を示すとき、人はこうしてぎゅーっと抱きしめるんだよ」


 僕はサーシャの言葉を思い出しながらクレアのことを優しく抱きしめる。


「……ッ」

 

 クレアは僕の腕の中で体を少しばかり震わせる。


「そうですよ!」

 

 僕とクレアのやり取りを端で聞いていたサーシャも立ち上がって頷き、僕とクレアの方に寄ってきてクレアを僕ごと抱きしめる。


「二人ともぎゅーです。どちらとも大好きですよ」

 

 僕とクレアを優しく抱きしめるサーシャは心の底からの愛の言葉を吐露し、彼女は幸せそうな表情を浮かべる。


「……」


「……」


 そんなサーシャに対して、僕とクレアはほぼ同タイミングで少しばかり視線を下げるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る