第128話 教会への寄付、そして・・・

「つまらないにゃ。結局何もイベントが起こらなかったにゃ。」


「いやいやラック。お前この前と言ってる事が正反対じゃないか?盗賊の拠点に行った時は、楽して依頼を達成できる方がいいって言ってたじゃん。それから考えると、実習の護衛依頼も何も起こらなくてよかったじゃん。」


「それは又、話が別にゃ。学校の課外授業と言えばイベントが起こるのが普通にゃ。例えば予想外の魔物が現れるとか。皇子がトラブルを起こすとか。だれかが皇女を狙ってるとか、考えれば色々あるにゃ。そしてそういった事が起こるのはラノベの定番にゃ。それなのに何も起こらないなんてラノベの作者に失礼にゃ。冒険者として生きていくなら色々なイベントが起きないと楽しくないにゃ。冒険者してる意味がないにゃ。」


「それは・・・まあそうだけど。」


(いや、なんで俺怒られてるんだ?訳が分からないんだけど・・・)


2泊3日の実習は、大きな問題が起こる事もなく終わった。道中問題事を避ける為に皇子パーティとなるべく出会わないようルートを選んでいた事もあり、トラブルに巻き込まれる事もなかったのだ。


無事に護衛依頼を終えて、ギルドで報酬をもらったカイン達は、日課の教会へと向かっていた。帝都に来てからダンジョン攻略、ギルド依頼、盗賊のお宝、今回の護衛依頼と着実にお金を貯めていたので、神の奇跡の開放には全然足りないが、女神様の為に今回は寄付しようと決めていたのだ。


「そういや今日は金貨何枚寄付するにゃ?」


「金貨600枚だな。」


「僕も神の奇跡を開放する所を早くみたいっす。」


「そうだな。だけど次の神の奇跡の開放に必要な金貨は1600枚だからな。今回寄付してもまだ後金貨1000枚寄付しないと無理だな。」


(ようやく金貨600枚だからな。まだまだ先は長い。前までは寄付したらほいほい神の奇跡をもらえたけど、かなり厳しくなったな。と言っても1年に一つ解放できる感じか。まあ次は更に倍になる訳だから、1年じゃ無理かもしれないけど・・・。それ相応のスキルをもらえるから愚痴を言うのはお角違いなのはわかってるけど。やっぱなかなか次の神の奇跡を解放できないとなるとムヤムヤするな。)


「モリーに行って他の盗賊の情報を集めてもらうにゃ。盗賊がため込んでるお宝を奪えば金貨1000枚なんてすぐにゃ。」


「いやいや盗賊って普通、金に困ってるヤツらがすぐんだろ?お宝とか持ってる方が珍しいんじゃないのか?それにこれから先はもっときつくなる。コツコツ寄付していくのが一番の近道さ。」


「僕も早く強くなって、もっとお金を稼げるようにするっす。」


「ああ。スズならできるさ。なんせ『ゴッドノイヤシ』の祝福持ちなんだから。」


(スズもラックも俺と同じランクの神の祝福持ちなんだよな〜。まあ俺みたいに金でスキルをもらえる訳じゃないし、俺以上にどんな祝福なのかわからないよな〜。まあラックの場合は、キャットシーフだから、ある程度は予想がつくけど・・・。さっき愚痴愚痴言ってたけど、実は俺の祝福ってスキル解放がかなり、簡単な部類に入るのかもな。女神様、愚痴ってごめんなさい。感謝してます。本当です。感謝してます。だから見捨てないで下さい。)


「まあ早く寄付して家に帰るにゃ。護衛依頼したお礼に今日はジェーンとメアリーが夕食を作ってくれるって言ってたにゃ。」


「そうだな。」


教会へと入ったカイン達は、いつもはお祈りだけだが、金貨100枚入った袋を6つ取り出して、寄付箱へと入れた。


(女神様、最近全く寄付できていませんでしたが、良い依頼に恵まれてお金が貯まりましたので、次の神の奇跡には足りませんが、金貨600枚を寄付致します。これからはちょっとずつですが、寄付していきますので、俺達の行動を今後も温かく見守ってください。)



『寄付金額が合計22,580,000ガルとなりました。次回の神の奇跡の解放には、32,768,000ガル必要ですが、特例措置として、3分の1だけ神の奇跡Pが解放されます。』



「えっ・・・」


『寄付金額が合計22,580,000ガルとなりました。次回の神の奇跡の解放には、32,768,000ガル必要ですが、特例措置として、3分の1だけ神の奇跡Pが解放されます。』


カインが戸惑っていると再度同じアナウンスが流れた。


「まじか・・・」


金貨600枚を寄付したら、どういう訳か新たな神の奇跡が解放されたのだった。

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