第103話 なんでもない依頼を受けた結果・・・
(どうしてこうなった・・・)
カインとラックの目の前には銀色の髪をした女性が椅子に座ってホットミルクを飲んでいた。年はカインとラックより少し上ぐらいだ。
(たしか今日は、昨日新しい神の奇跡を開放したから、手に入れた能力をバニーさんに言っておこうと思ってラックとギルドに行ったんだよな?それで、バニーさんが仕事で王都にいなかったから、適当な依頼を受けたんだったよな。)
カインとラックは、黒亀ダンジョンに行かずにギルドのボードに貼られていた依頼を受けて、森へと向かった。
受けた依頼は、森に生息しているホーホー鳥の卵を手に入れるというモノだった。依頼を見つけた時に、久々に親子丼が食べたくなったカインが、即座に決めた依頼だった。
ホーホー鳥を見つける為に森の中に入ったまではよかったが、そこで大きな問題が起こった。
(あの時、気配察知に出た反応を調べたからこうなったんだよな・・・。まあ実際人助けにはなったから後悔してないと言えばしてないんだけど。それでもお姫様って・・・なんかよくあるラノベの主人公みたいになってきたぞ?どうするこれ・・・)
その大きな問題とは、一人の女性が3人の男に追いかけられていたのだ。どこからどう見ても男性が女性を捕まえようとしていて、女性が逃げているのが分かる構図だ。そして、カインとラックがその場に現れるとその女性は男性に捕まっていた。
女性が男性達の手の内にあるので、カインとラックはうかつに手を出せずにいたが、ラックの一言で場は解決した。ラックはカインに、ここで手に入れたチートを使ってあの女性を助け出そうと提案したのだ。
その言葉にカインは一瞬戸惑ったが、命には代えられないと、新たに解放された神の祝福の盗むを使った。すると、男達の手の内にあった女性は一瞬にしてカインの元に移動した。
女性も男達もカインとラックも全員が、突然の出来事に驚いたが、そんな事をしている場合ではなかった。
そこからは、ラノベでよくある展開だ。カインとラックは男性3人を撃退した。なかなかの手練れだったが、今のカインとラックの手に掛かれば問題はなかった。殺してはいないが、気絶させて森の中に放置してきた形だ。
女性を助けたカインとラックは、その女性になぜ追いかけられていたのか問いかけたのもいけなかった。そこで、有無をいわさずに立ち去っていればただの人助けだけで終わっていたかもしれない。
だが、そんな事はなかなかできないだろう。助けた女性はカイン達よりも少し年上に見えるが、銀色の髪は艶々で衣類は所々破けてはいたが高貴な感じを漂わせていた。もちろん顔の形も整っておりスタイルもしゅっとしている。
カインはすぐに、どこぞの貴族だと思ったが、ラックはそんな事を思ったのか思っていないのか気軽に女性に話しかけた。
結果、アルプス王国のお姫様だという事がわかり、帝国に留学に行く途中襲われて逃げてきたという事がわかった。しかも襲われた連中に心当たりがあるようで、この女性の兄の手によるものらしい。
女性を反故した後に襲われた馬車の元へと向かったが、カインとラックが倒した3人は結構な手練れだったようで、馬車の中で怯えているメイドを一人残して護衛や御者は殺されていた。
その場にいると、他の追手がいるかもしれないという事で、カインとラックは、これまた新しく手に入れた神の奇跡の隠密を使い、王都にあるカイン達が借りている家へと向かい今に至るという訳だ。
(人命救助できたのはよかったけど、盗むを使ってしまったのは早計過ぎたかな?使わなくても助ける事が出来た可能性はあったわけだし。いやでも咄嗟の判断では
よかったか?お姫様にもし何かあったら俺の首が飛ぶかもしれない訳だし・・・。それよりもこれからどうするかだ。さすがにこのまま見過ごすっていう流れにはならないだろうし・・・。)
「落ち着きましたかお姫様?」
「ええお陰で助かったわ。ありがとうカインにラック。それと私の事はジェーンって呼んで。親しい人はみんなそう呼ぶし、ここは王城でもないもの。堅苦しいのは好きじゃないわ。」
「ですが・・・」
「わかったにゃ。ジェーンよろしくにゃ。早速話を聞かせてほしいにゃ。」
「そうだな。帝国に留学に向かう途中っていうのと、襲われた連中がジェーンの兄の手の者っていうのは聞いたけど、全然話が見えない。折角知り合ったんだ。俺達で良ければ相談に乗るぞ?」
「でも・・・」
「姫様。この方達を頼ってはどうでしょうか?姫様と年も変わらないのに、あの襲ってきた方を倒した程の実力です。きっと頼りになります。それに、私達には時間がありません。」
「メアリー・・・。そうね。わかったわ。カイン、ラック何故襲われたのかおおよその見当はついてるの。少し長くなるけど話を聞いてくれる?」
「もちろんにゃ。アタシはジェーンの味方にゃ。だけどカインを誘惑するのは禁止にゃ。カインに手を出さないって約束できるならアタシはいつでも力を貸すにゃ。」
「ラック・・・。ジェーン。話を聞かせてくれるか?俺達にできる事があるなら協力するから。」
そうして、ジェーンは事の顛末を話し始めたのだった。
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