第70話 モンスターハウス

地下29階でモンスターハウスの罠を見つけたカインは、ラックにモンスターハウスに挑戦してみないかと提案し、ラックの了承が得られたので、モンスターハウスの罠を踏んだ。


(ちゃんとギルドで罠の説明聞いていてよかったな。不意に行くのと気持ちが全然違うし。)


思い出すのは、以前ギルドで罠の説明を聞いた時の事だ。


☆☆☆


カインとラックの二人は、青亀ダンジョンに挑む前にギルドでダンジョンの罠について聞いていた。


受付のマリンから、


「ダンジョンにある罠は、毒矢の罠や落とし穴、岩が落ちて来るようなモノや、他の階に飛ばされたり、同じ階の別の場所に飛ばされる罠にモンスターハウスのようなたくさんの魔物がいる場所に飛ばされる罠があります。」


(なるほど。まあいわゆるよくある罠だな。毒矢や落とし穴、岩なんかは最悪あたっても死ぬことはないから大丈夫だ。だけど、転移の罠とモンスターハウスの罠はヤバい。どうにか見分ける手段が分かればいいんだけど・・・)


「その罠は事前に見つける事ができるんですか?」


「ええ、このダンジョンは比較的難易度が高くありませんから罠も事前にわかるようになっています。例えば転移の罠ですが、1m四方の地面が赤く光っていれば違う階に飛ばされて、青く光っていれば同じ階の別の場所に飛ばされます。注意深く見ていれば問題なく発見できますよ。そしてモンスターハウスの罠は地面が盛り上がっていて緑色に光っています。王都にあるような難易度の高いダンジョンでは、光ってなくてスキルや魔法を使わないと見つける事ができないんです。」


(なるほど、初級ダンジョンで罠の種類を学んで、上級ダンジョンでは、罠にかからないようにスキルか魔法を準備する。もしくは罠にかかっても対処できる実力がないなら挑むなって感じか。)


☆☆☆


モンスターハウスの罠を踏んで移動した先は縦横100m程の丸くなった大きな広場だった。


「あれ?魔物なんていないぞ?」


カインがそう思ったのもつかの間、部屋全体がうすく光り、そして大量の魔物が現れた。


「来た。ラック作戦通り行くぞ。まずは脱出用のワープゾーンまで道を作る。さっき見た感じならあっちの壁沿いにあった。壁沿いにあるのは都合がいい。逃げ道を確保したら壁を背にして魔物を倒すぞ。基本的にはラックは好きに動いてくれ。俺がサポートする。回復薬は出し惜しみするな。俺も回復魔法を使うが使えない場面もあるかもしれない。その時はためらわずに使え。」


「わかったにゃ。」


ラックは返事をすると、爪を伸ばして魔物の群れに向かって行く。ラックの役割はそのスピードで魔物をかく乱する事だ。回避を優先して回避しながら魔物に攻撃をしていくラック。倒す事よりも回避を優先してるので、ラックの攻撃で倒れない魔物も多いが、攻撃を受けた魔物は動きが鈍る。そこにカインが魔法と刀で止めを刺して行く流れだ。


カインはラック程スピードが速くないので、遠くの魔物は魔法で、近くの魔物は刀で魔物を倒していく。剣とは違い、切る事に特化した刀はおもしろいように魔物を切り刻んで行く。見渡す限りに魔物がいるので、適当に刀を振り回してもドンドン魔物は死んでいった。


咄嗟の逃げ道を確保したカインとラックは、そこからカインが広範囲魔法を連発し、倒し漏れをラックが倒していく。いくらレベルがカイン達の方が上だと言っても魔物達の数は多い。無傷で倒し切るのは不可能なので、攻撃を受けてもひるまずに目の前の魔物をカインもラックも倒して倒して倒して行った。


数が半分以下になると、脅威度はグンと引き下がった。会話する余裕も生まれ、ラックは魔物に向かって一体一体を切り裂いていく。カインも近い魔物から順にスラッシュやファイアーアローを使って魔物の数を減らして行った。


そうして休む事なく目の前の魔物を倒し続ける事20分・・・ようやくモンスターハウスの魔物は一体もいなくなった。地面には無数の魔石が転がっていた。


「倒せたにゃ。カインの作戦なら行けると思ったけど、思いのほか疲れたにゃ。これはやっぱり自ら行くようなモノじゃないにゃ。」


(たしかにそうだな。レベル差から死ぬことはないだろうけど、あれ程多くの魔物にタコ殴りにされるのは精神的にきつかった。効率は最上に良いだけに悩み所だけど、行きたくないっていうのは同意だな。明日は地下30階のボスを倒したら地上に戻って休みを設けた方がいいな。俺も疲れた。)


「とりあえず魔石を集めたらワープゾーンで戻ろう。戻ったらゆっくり休めるんだ。もうひと頑張りだ。」


「カインは人使いが荒いにゃ。だけど、カインのサポートのお陰で助かったにゃ。それに今回の戦闘でアタシは又強くなった気がするにゃ。」


(まああれだけ倒したらレベルも上がるよな。エクストラステージの事を考えたらレベルは50ぐらい欲しい所だ。さすがにそこまでは上がらないだろうけど・・・まあ良い経験が出来た事には違いないな。は~俺も早く魔石を集めて休みたい。急いで集めよう。)


そうして、カインとラックは落ちている魔石を拾い集め、ワープゾーンで地下29階へと戻るのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る