第47話 ハニービー討伐
ギルドで依頼を受けたカインとラックは、町の外に出て街の周りを囲んでいるリンゴの樹を見つめた。
「どれもこれもおいしそうに実がなってるにゃ。一つぐらい取ってもわからないにゃ。」
「取ったら捕まるから止めろよ。」
「それはふりなのかにゃ?」
「いや普通に注意だから。本当にするなよ。絶対にするなよ。」
「それはリンゴを取れって言ってるのと同じ意味なのにゃ。」
(なんでラックって俺がいた世界の事をこんなに知ってるんだ?もしかしてラックも前世は俺と同じように日本の記憶を持ってるとか?不思議キャラだよな~。)
「下手な漫才は止めてハニービーを探すぞ。」
「わかったにゃ。」
(まあこんなやり取りも楽しいと言えば楽しい自分がいるけど・・・)
カイン達はリンゴ樹園を過ぎて町の周りの探索を開始した。すると、いきなり前方に蜂と言ってよいかわからないほど大きな蜂がぶ~んと飛んでいるのが見えた。
「カイン。あれがきっとハニービーにゃ。でもすごく大きい蜂にゃ。」
「ラックは目もいいんだな。ああ、俺にも見えるけどたしかに大きいな。日本で見た蜂の何倍だ?虫じゃなくて魔物って言うぐらいだから大きいのはわかるけど、ラックの猫サイズぐらいあるんじゃね?あれならリンゴをかじるっていうより、1個丸ごと加えそうだな。」
「どうするにゃ?」
「ああここからなら魔法を使ってもリンゴ園に被害はないから俺がファイアーボールで狙ってみる。一発で倒せるか試したいし。」
カインは、ハニービーに狙いを定めてファイアーボールを放つ。放った魔法は一直線にハニービーに命中した。魔法が当たったハニービーは、地面へと落ちていく。
「やったにゃ。ファイアーボール一発で倒せるならゴブリンと一緒にゃ。これなら楽勝にゃ。」
「そうだな。気配察知でハニービーの気配は覚えた。周囲に何体もいるみたいだからもしかしてゴブリンと同じように数の多い魔物かもしれないな。」
「アタシが先に行って針を回収してくるにゃ。」
ラックが走ってハニービーの死骸の元に向かった。
「おいおい。周りにもハニービーがいたらどうするんだよ・・・まあ俺の気配察知には引っかかってないから大丈夫だけど・・・」
カインは歩きながらラックに近づいて行く。
「カイン!大変にゃ。落ちた拍子に針が折れたみたいにゃ。」
カインがハニービーに近づいて見てみると、中指程の針が真ん中からポッキリと折れていた。
「これは討伐を証明するモノだから折れてたって多分大丈夫だろ。両方持って行けば1カウントとして判断してくれるんじゃねぇ?」
「わかったにゃ。どっちも回収するにゃ。死骸はゴブリンの時のように燃やすにゃ?」
「そうだな。俺が魔法で倒せるのがわかったから、次からはラックが爪を使って倒せるか試してみよう。とりあえず単体でいるハニービーを狙おう。ラックが倒せるならラックが倒して俺が回収と焼却をすれば効率がいいしな。」
「わかったにゃ。ドンドン倒してバシバシレベルを上げるにゃ。」
(これで銀貨1枚~3枚か・・・宿代が俺とラックで朝と晩の食事付きで金貨1枚と銀貨2枚、昼はまあ2人で銀貨1枚と考えると、毎日最低でもハニービーを13体は倒さないといけない計算になる。神の奇跡の事を考えると毎日金貨1枚以上は貯金していきたい所だ。武器や防具もメンテナンスしながらと言っても、長く使える訳じゃない。魔法書だって買いたいし・・・は~全く金が足らないな。)
カインはここに来て、少しだけ後悔した。なぜならオルスタインで以前のようにダンジョン生活をしていれば、安定して毎週金貨10枚以上を貯金できていたからだ。魔法書も購入できたし、寄付もできた。
(だけど、そんな安定を求めるのはまだ早いだろ。俺は定年したジジイじゃないんだ。まだまだ可能性がたくさんある12歳だぞ。安定より冒険を求めるのは当然だろ。それに異世界だぞ。ギルドで会ったように獣人とか他にはエルフなんかにも会ってみたいし、貴族令嬢とかきれいな女性と仲良くだってなりたい。なら弱音をはかず現状でできる事を一つ一つこなしていくしかないか。)
カインが気配察知で単体で動いているハニービーを見つけ、それをラックが爪を伸ばして襲いかかった。ラックのレベルは2だが、スピードの能力値はすでにDだ。ハニービーより早いとは言わないがラックの爪は確実にハニービーを捉えた。
カインの剣ほどの威力がありそうなラックの爪による攻撃は、ハニービーを難なく切り裂いた。
(よし。ラックでもハニービーは倒せそうだな。それにしてもラックの爪はヤバいな。普通に武器として通用してるし。これなら順調にレベル上げできそうだ。あれ?そう言えば俺とラックってギルドでパーティ申請したよな?じゃあ俺が魔物を倒してもラックに経験値が行くのか?その辺どうなんだ?能力の詳細が見えるのは俺だけだからこの世界の人達にレベルの概念はないから、ギルドで聞いた所でわからないかもしれないけど、一応聞いてみるか。その辺確認しておかないと、折角ラックが倒しても半分俺に経験値が流れるなら、ラックに悪いもんな。)
「よし。さすがラックだ。俺が死体の処理に、討伐証明、周りの警戒をするから、ラックは戦いに集中してくれ。」
「わかったにゃ。ドンドン行くにゃ。」
そして、その後ラックは調子をドンドン上げていき、最終的に30体ものハニービーを倒したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます