第36話 緑亀ダンジョンの最下層のボスは・・・

冒険者ランクをDからCにあげる為、ダンジョンを完全攻略する事にしたカインとラックは、地下29階まで来ていた。一日に2階層ずつゆっくりと進みながら、少しずつ攻略を進めようやくこのダンジョンの最下層の手前まで来たのだ。


「よしラック。今日はここで休んで明日に備えよう。」


「わかったにゃ。ようやくダンジョン生活も終わりだにゃ。ミルクはまだまだあるからアタシは問題ないけど、カインが言うようにお風呂に入れないのはきついにゃ。」


「だよな~。明日はサクッとボスを倒してゆっくりお風呂に入ろうぜ。」


カインは、いつものように肉を焼いて、スープを作り、パンを取り出して食事の準備をした。ラックには肉とミルクだ。


「カイン。地下30階のボスはどんな魔物がでるんにゃ?やっぱりゴブリンかにゃ?」


「そうだ。ラックは知らないんだったな。俺もバニーさんにここの最下層のボスを聞いて驚いたんだ。心して聞けよ。」


「なんにゃ?そんなに強い魔物なのかにゃ?」


「いや、まあ強い事には強いと思うんだが・・・いいか。驚かず聞いてくれよ。地下30階に出る魔物はグリーンタートルゴブリン。亀の甲羅を背負ったゴブリンが3体だ。」


「亀の甲羅を背負ったにゃ?緑亀のダンジョンにゃんだから亀の甲羅が出てきてもおかしくないにゃ。」


「続きがあるんだ。このグリーンタートルゴブリンには特徴があるんだ。亀の甲羅は遠距離の魔法を弾いて、武器の攻撃も全く効かないらしい。」


「魔法も剣も効かないのにゃ?それじゃあどうやって倒すのにゃ?」


「効かないのは亀の甲羅の部分だけだから、それ以外の場所は魔法も効くし剣の攻撃も通る。しかも動きが遅いらしいから、素早く動けば甲羅を避けて攻撃するのは簡単らしい。」


「ならなんも問題がないのにゃ。」


「いや、実はある程度ダメージを与えるか、1体が死ぬと、グリーンタートルゴブリンは背負っている亀の甲羅を脱ぐらしいんだ。そして脱いだら予想以上のスピードで攻撃を仕掛けてくるらしい。」


「それって・・・もしかしてアレにゃ?」


「ああ。俺もそう思う。」


(亀の甲羅を背負ってて、脱いだらスピードが上がるって聞けばあのアニメを思い出すよな。バニーさんから聞いたときは俺も驚いたよ。驚いたけど、神の奇跡があんな感じだしあるえるな。とも思ったけどな。たしか20キロとか40キロだったよな。アニメの亀の甲羅って。どれだけ早くなるかはわからないけど、予想以上って言うぐらいだ。甲羅を脱がせると厄介なのは間違いないだろう。攻略法は同時に一気に倒す事ってバニーさんは言ってたけど、ダメージ管理をうまくしなきゃな。)


「カインが心して聞けっていった理由がわかったにゃ。だけど、カインはここに来るまでにレベルを30まで上げて、能力もBになったって言ってたにゃ。だからカインなら問題なく倒せるはずにゃ。それに、いざとなったら『バース!』を使えばいいにゃ。気絶してもアタシが帰還玉を使うから地上にはちゃんと戻れるにゃ。」


「そうだな。もしもの時は頼むぞラック。」


「まかせるにゃ。」


(そうだ。今の俺は一人じゃない。ラックがいる。そう仲間がいるんだ。一人じゃできない事もラックがいれば色々とやれる事が増える。はは、いつの間にかラックがいるのが、当たり前になってきたな。まあこういう生活も悪くないけど。)


ラックといつもの何気ない会話をして、その日はゆっくりと休んだ。カインにとってこの時間は、気分をリラックスさせ疲れを癒す時間となっていた。いつの間にかラックはカインにとっての癒しとなっていたのだ。


そして翌日、カイン達は地下30階へと降り立った。そこには、事前にバニーより聞いていた通り、緑の甲羅を背負ったゴブリンが3体いた。


「あれがグリーンタートルゴブリンにゃ。なんか全員苦しそうにゃ。」


(たしかに。あれじゃ罰ゲームかなんかで重りを背負わされてるみたいだ。やっぱ重いんだろうな。どれだけ動きが遅いのかはわからないけど、見た目以上に亀の甲羅は重いのかもな。)


「予定通り、3体同時に攻撃する。所詮ゴブリンだ。火属性魔法で攻撃すれば倒せるはずだ。序盤はファイアーボールかファイアーアローの3連でダメージを均等に与える。一定以上のダメージを与えたら甲羅を外すみたいだから、それより前に中級魔法のフレア系で一気に倒す。ラックは距離を取っておいてくれ。もし仮に甲羅を脱いだらラックが狙われるかもしれないからな。」


「わかったにゃ。遠くから応援してるにゃ。」


カインとグリーンタートルゴブリン3体との戦いが始まった。カインが魔法を使うと、ゴブリン達は背中を向けて魔法を防御する。


「なるほど、ああやって攻撃を防ぐのか。なら防いでいる内に逆側から同じ魔法を使えば防げないだろう。」


カインの予想通り、動きの遅いグリーンタートルゴブリンは、一方方向からの攻撃しか防ぐ事が出来なかった。魔力の消費と運動量が増えるが、カインは一度攻撃し、その間に別の攻撃をしてゴブリン達にダメージを与えて行った。


(そろそろ一気に片を付けないと、3体とも甲羅を取られたらたまらないからな。ファイアーボール使った後にフレアボムを連発するか。オーバーキルぐらいが丁度いいよな。)


カインは、ファイアーボールを囮にして、範囲攻撃のフレアボムを放つ。大きな爆発がゴブリンを襲う。カインは爆発の中に2回目、3回目とフレアボムを連続して放った。


そして、煙が収まると・・・


グリーンタートルゴブリンは消え去っていたのだった。

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