ギルドで借りていた本を返し、バニーに不明点を聞いたカインは、いつもの草原に来ていた。

「とりあえずどれぐらい魔法を使えば魔力がなくなって気絶するのか確かめておかないとな。森の方が魔物は多いんだろうけど、別に魔物に向けて魔法を使わなくても魔法の練習はできるもんな。まあスライムやホーンラビットがいてくれた方が的があってより練習にはなるだろうけど、見つけるのに時間がかかるからとりあえず今日は、詠唱魔法と無詠唱魔法の練習だな。」

ギルドから借りた初級魔法の本で火属性、水属性、風属性、土属性の初級魔法の詠唱文は本を読んだ事で覚えていた。

「まずは火魔法からだな。」

カインは火魔法の詠唱を唱えた。

「自然界に存在する火よ。我の元へ集え。そして目の前の敵を燃やしたまえ。ファイアーボール。」

カインが手を草原の先に向けて、詠唱を行うと、体内の魔力が自然と手のひらに移動し、手のひらから野球ボールぐらいの火の玉が一つ飛び出てきた。

「おお！！！魔法だ。火魔法だ。なるほど詠唱魔法はこんな感じなんだな。大きさは野球ボールぐらいで、別にサイズを指定した訳じゃないから詠唱魔法は多分形はきまってるんだろう。」

ファイアーボールの魔法を使ったカインは、続いて水魔法、風魔法、土魔法の初級魔法を使って行く。

「初級魔法はどれも似たような感じなんだな。まあウォーターボールに、ウインドボール、アースボールって名前もまんまだしそんなもんか。とりあえず初級魔法は全て発動する事がわかった。他の魔法も詠唱文さえ覚えれば使えるようになるんだろうか？？それとも魔力量とかが関係してくるのかな？？魔力量は可能性があるよな。詠唱を覚えただけで魔法が使えるなら初級以外の中級とか上級、あるかわからないけど超級とか神級みたいな強い魔法もすぐに使えてしまうもんな。」

詠唱魔法には、初級、中級、上級、超級、伝説級、神話級の6種類のランクが存在する。初級魔法一つとっても3種類の魔法が存在するので、カインはその内の一つを覚えた形だ。ちなみに詠唱文はそれぞれ魔法書と呼ばれる本に載っており、普通は魔法屋と呼ばれる場所で購入する必要がある。

カインの推測した通り、魔力が少ないのに神話級の詠唱文を唱えても魔法は発動しない。今回はカインが初級魔法の詠唱をすると、魔法が発動したが、自分の能力以上の魔法を使おうとした場合、文字通り魔法は発動しないのだ。何度も魔法を使う事で魔法への理解が深くなり、より上位の魔法が使えるようになる。能力で表すと魔力と知力の項目がそれにあたる。

魔力と知力のランクがEであれば初級魔法が使え、Dであれば中級魔法が使える。同じようにCであれば上級魔法が使え、Bで超級魔法が、Aで伝説級、Sで神話級の詠唱魔法が使えるようになるのだが、この時のカインはまだその事を知らない。

「とりあえず初級魔法を一通り使ったけど、魔力がなくなるような感覚はまだないな。初級魔法4発でも大丈夫って事だな。念のため、どれぐらいの数使えるか覚えておいた方が確実だよな。よし次は無詠唱魔法を試してみるか。さっきは魔力の移動が詠唱する事で自動で動いたけど、自分で動かす感じで魔力を放出すれば、さっきと同じファイアーボールができるはずだ。」

カインは、深呼吸して、体内の魔力を手のひらに集めてさっきのファイアーボールをイメージした。うまくイメージできるように目をつぶり集中した。そしてイメージが固まり目を開けると、手のひらの上に先ほど詠唱してつかった火の玉が浮かんでいた。

「できた。やっぱりイメージがあれば詠唱文なんかなくても魔法は使えるんだな。目をつぶって集中してイメージしないといけない所は実践ではまだまだ使えないと思うけど、練習すれば実践でも使えるようになるよな。とりあえず、このファイアボールをあの木に当てる感じでっと」

カインを手を突き出すと、手のひらの上に浮かんでいた火の玉はカインの元を離れ10m先の木に当たった。

「よしよし。無詠唱魔法も無事に使えたぞ。今回はさっきの野球ボールみたいな火の玉をイメージしたから同じような大きさになったけど、小さくしたり大きくしたりもできそうだな。卓球の玉とかバスケットボールをイメージすれば大きさは変える事ができそうだな。威力は多分魔力を込める量を増やして圧縮？濃縮するイメージでいけばファイアーボールの威力も調整できそうだ。とりあえず使える事がわかったから今日は初級魔法と同じぐらいのイメージでどれぐらい使えるか試してみるか。」

その後、詠唱魔法は普通に使える事がわかったので、水属性、風属性、土属性、光属性、闇属性、氷属性、雷属性をそれぞれ無詠唱で試して行った。

「あっ。なんか今、ちょっと違和感があったな。これが魔力枯渇するイメージか？もう一回魔法を使って試したい所だけど、使って気絶したら元も子もないから今日の所はこれで終わりにするか。だいたい20回ぐらいは使えるって事だな。しばらく無詠唱魔法の特訓をしたい所だけど、お金も稼がないといけないし、うまくスケジュールを立ててやっていくしかないな。よし！今日は帰ろう。あ～おもしろくなってきた。異世界最高だな。女神様。ありがとう。動く城君はすごい役に立ってます。」

魔法の練習を終えた、カインはいつものルーティーンである教会でお祈りをするために街へと戻るのだった。