第30話 塩が作れるってことぉ!?
崖を覗き込むとそこには確かに水が波打っていた。まだ大きな湖という説もあるが、限りなく海の可能性が高い。
「ちょっ、ちょっと海!」
『な、なんですか?』
「あーごめん……、興奮しちゃって。見てよ海がある」
報告が終わったのか、戻って来たホタルにも崖の下を見てもらう。
『……高いわね』
「高いの苦手?」
『いいえ?』
絶対に強がっているが、触れないであげよう。ヴォルも俺と同じ体勢になって海を見下ろしている。
なんとか海水かどうか確かめたいが、高さがそれなりにある。飛び込むだけなら簡単だが、登って戻れる気がしない。
「うーん、どうしたものか……」
使えるスキルやアクションが無いか確かめていると、【魔法基礎】のレベルを上げた時に手に入れた【土流】を思い出す。
「土流で足場作れるかな」
『MP管理が大変そうだけど、やってみる?』
そうと決まれば早速、小さな足場を崖の側面に生成してみる。両足がギリギリ乗るか乗らないか程の大きさで、これを階段のようにして下まで降りてみよう。
「……」
『どうしたの?』
「やっぱ命綱って大事だと思うのよ。ヴォルくん、ツルを持ってきたまえ!」
「わうっ!」
…………
………
……
「よし」
ヴォルに、簡単には千切れそうにないツルを持ってきて貰い、一端を俺の体に巻きつけ、もう一方をまず抜けそうにない木に縛りつける。これで簡易的な命綱の完成だ。
『本当に大丈夫なの?』
「あるのとないのとじゃ気持ち的に違うんだよ。効果があるかは知らない」
『度胸があると言えば良いのか、馬鹿だと罵れば良いのか……』
「でもここで海水を手に入れる事が出来れば塩を作れるかもしれないんだぞ? もっと美味しい料理が作れる」
『……私も食べられるのかしら?』
「じゃあ行ってくる」
『ちょっと?』
これ以上はまずいので、足場を生成させながら崖を降りていく。高さ的にMP残量は四割になるかな。
水面に近づけば近づくほど、深さがあるのが分かった。魚影らしき物も、チラチラと目につく。
「これ魚かな?」
『え、どれかしら?』
「え、見てないの?」
『尻尾をふりふりしてるヴォルちゃんを見てたの』
「さようですか……」
そんなこんなで水面にたどり着いた。MP残量は意外にも半分残っており、MPがゼロにならないよう調整して広めの足場を作成する。
厚さは20センチ程で、俺が一人余裕で寝っ転がれる程の足場だ。
もし釣竿とか作れたら、ここで釣りも出来そう。
「ちょっと舐めてみる」
『ええ』
人差し指を水につけ、残った水滴を口に入れる。
「しょっぺ」
『という事は海水ね』
「これで塩が作れるってことぉ!?」
『魚もいるみたいだし、食材も増えたわね』
調味料として一番重要と言っても過言ではない塩が手に入る。
今まで素材の味だけで焼く、擦り潰す、煮るしかして来なかったが、ようやく調理っぽくなるはずだ。
……でも何か忘れてるような。
命綱は付いてるし、MPもセーフゾーンに帰るだけの残量は残してある。
剣も盾も持ってるし、インベントリには投擲用の石とさっき取ったパルズ草。
何を忘れてるんだ?
『それで、どうやって海水を持って帰るのかしら』
「あ、それだぁ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます