第24話 これが正解なのか?
『鑑定出来たのね』
「そりゃそうだよな、鑑定できるよ」
ヴォルたちをゆっくりずらして、起き上がり、ポピンの葉を一枚千切る。テキスト通りにポピンの甘い匂いが微かにした。
『早速【調薬】を取りましょう』
「ああ!」
スキル一覧から【調薬】をタップし、SPを使って獲得する。久しぶりにSPを使った気がするな。
これで残りのSPは調薬以前に諸々取ってたから16。まだまだ余裕がある。
「で、どうやって調薬……」
ポピンの葉を握ってスキルを使ってみると頭の中に調薬の方法が映像として浮かび上がってくる。
動作として元々知っていたような、脳に潜在的記憶としてあったようにポピンの葉の使い道が思い浮かんできた。
「すり潰せば良いみたい」
『平たい石を土台にしてみますか?』
「そうだね」
小屋の中に戻り、以前グリーンリザードの肉を焼いた時に使ったような、平べったい石を外に持ち出す。
ヴォルとスイが不思議そうにこちらを見つめてくるので、何か企んでる風にニヤニヤしておこう。
『なによ、その顔』
「ん? なんでもない」
平たい石に清水の魔法をかけて汚れを落とし、その上にポピンの葉を置く。ナイフで大まかに切り刻んだら、手頃なサイズの石ですり潰していく。
「あ、結構時間かかるっぽい」
『スキルのレベルも低いからかしら』
「かもね」
『……ふふ、ヴォルちゃんも興味津々ね』
ヴォルは、俺に構って欲しいのか、背中をよじ登ろうとしている。こういうやんちゃな感じ、堪らなく可愛い。
『聞きたい事があったのだけれど、いいかしら』
「なに?」
『アカウント名、なんでドーンなの? 私は苗字からそのままホタルだけれど、ドーンは柊木春馬からまったくかけ離れているわ』
「あー、小学生の頃から使っててさ。その、迫力あるじゃん?」
『はい?』
「いや漫画とかの効果音でさ、ドーンとかバーンとか……」
『ふふふ、可愛らしい理由ね』
「マジで恥ずかしい。これ知ってるの兄貴とヤッさんくらいだしな」
『配信の時説明してみたら?』
「いやだよ……」
『じゃあ、秘密にしておかないと』
そんな他愛のない会話をしつつ、ポピンの葉をすり潰していくと、粘り気が出てきた。その粘り気を強くするように揉み込むと、ようやく完成。
【再生の薬】
持続する回復効果を得られる。1秒間にHPを1% 持続時間60秒
「おお、これが、正解なのか……?」
『ポーション、と言うにはクリームに近いようね』
「あと即時効果じゃないんだな。これだとすぐに回復したい時とか辛いな」
『でも持ち運びは楽そうよ?』
「あ、確かに。液体だとまず持ち運べねーや」
清水の魔法で飲み水を確保していたせいで忘れていたが、俺には現状液体を持ち歩く事が出来ない。
水筒のようなものを自作できれば話は変わってくるが、木では耐久性、石では持ち運びの面で素材に向かない。
皮は革細工のスキルを取った事である程度素材になり得るが、まだまだレベルが低いので不安が残る。
「……そう考えるとありがたいな」
『そうね』
「わう!」
「フィ〜!」
ヴォルとスイたちがポピンの木で遊んでいる。スイは名前の通り、すいすいと上に登っていき、対するヴォルはもたもたと足場を確保しつつスイを追いかけている。
「あ、そうだ。リンゴって焼くと甘くなるの知ってた?」
『焼きリンゴ、大好きよ』
「作っちゃいます」
『な〜〜!?』
ホタルから聞きなれない悔しそうな声を聞きながら、ポピンの実を収穫。それにヴォルとスイがまた食べれると思ったのか近づいて来た。
「焼くから、ちょっと離れてな」
「わう!」
インベントリから木の枝を取り出す。てか今考えたらインベントリの中ロクなもの入ってないな。投擲用の石と木の枝数本て……
ここまでインベントリをうまく活用出来てないプレイヤー居ないんじゃない?
「……てか種火の魔法便利〜」
焚き木を組み、木の棒にポピンを刺して種火の魔法で焚き火をつくる。
【魔法基礎のレベルが上がりました Lv.3→Lv.4】
【土流の魔法を新たに習得しました】
『久々のレベルアップですね』
「たしかに」
土流の説明を確認してみる。
【土流】
マナを利用して周囲の土を操る。大きさによって消費マナは変化する。
「土を操るって事は……」
作業用の台を作るイメージで土流を使うと、一辺が1メートル程の四角い土の台が出来上がった。
「え! 便利すぎん!?」
『MPの確認をしないと』
そうだ、操った土に応じて消費するMPが増えるんだった。ホタルの言う通り、MPを確認すると、全体の6割近く削れている。
今日使ったのは清水と種火の魔法だけなので、この量のMPが減るとなると、多用はできないか……。
『大きな壁を作るというのはできないわね』
「そうだね。使い道があるとすれば、敵の足元にある土を盛り上げて体勢を崩す、とかかな」
『なるほど』
何か忘れてる気がするな。
「……焼きポピン!?」
危うく焦げポピンになるところだった。
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