36話 再び探索

とりあえず、これでメンバーは決まった。


俺、ユキノ、フーコ、エミリア、ニール、アイザック、カリオン率いる獣人達。


あとは万全の準備を整えて、森へと行く。


今回は、ダンジョンが見つかるまで帰らないつもりだ。


「さて、再び森に来たわけだが……カリオン、前の洞窟の位置はわかるか?」


「はっ! 我らが覚えております!」


「感謝する。それでは、後ろから指示を出してくれ。アイザック、前衛を頼む。あとは、前と一緒でいくぞ。俺とユキノ、エミリアとニールが続く」


「へいっ!」


すると、フーコが俺の足元をチョロチョロして見上げる。


「コン?」


「ん? お前は俺の側にいなさい」


「コンッ!」


「「いいなぁ」」


「……えへへ」


「……ほほほ」


なぜが、エミリアとユキノが同じことを言った。

そして、お互いに気まずそうな顔をしている。

嫌な予感がするので、それを無視して探索を始めるのだった。





幸いなことに、前に探索したのが効いたのか……魔物の数が少ない。


小物だが、生きている魔獣もちらほら見かける。


つまり、生き物が帰ってきたということだ。


「これなら、以前より早く行けそうだ」


「そうっすね。木を伐採してる連中も、最近はやりやすいって言ってましたぜ」


「それは効率も上がるしいいことだ。そうなると、いよいよ建物とかを建てていくか」


「ここで寝泊まりとかする奴もいるんで、あったら助かりやす」


「帰ったら、ドワーフ族に相談してみるか」


そんな会話ができるくらいには余裕がある。

フーコは楽しいのか物珍しいのか、辺りをキョロキョロしている。


「おい、あんまり離れるんじゃないぞ?」


「コンッ!」


「まるで散歩気分だな」


「今はいいんじゃないですか? ずっと気を張っていても仕方ないですし」


「まあ、それもそうか……こういう時は、お前の呑気さが助かるな」


フーコがいるということで、いつも以上に気を張ってきたらしい。

リーダーの俺がそんなでは、周りの奴らも気を使うだろう。

何より、くると決めたのはフーコだ……あんまり過保護なのは失礼かもしれない。


「えへへー、惚れ直しちゃいました?」


「その前提だと、俺がお前に惚れてることになるが?」


「ちょっと!? そうなのですか!?」


「だァァァ! エミリア! どうして腕を組むっ!?」


「どうしてって言われましても……こうすれば寒くないですわ」


「ずるいですっ!」


「お前もか! ブルータス!」


右腕にはユキノ、左腕にはエミリアが抱きついている。

当然、柔らかなモノが当たるわけで……火属性魔法も使ってないのに暑くなってくる。

ちなみにブルータスのネタがわかる奴は昭和生まれの可能性大……知らんけど。


「というか、それを着てれば寒くないだろうに」


「確かに、頂いた熊の毛皮コートはあったかいですわ。ですが、それとこれとは話が別ですの」


「むむむっ……エミリアが積極的になってきましたね。これは戦争の予感がします」


「なんの戦争だよ」


「コンッ!」


「はいはい、お前も足にくっつくんじゃないよ」


幾ら何でも気を抜きすぎてはないだろうか。

……まあ、それくらいの方がいいか。

今回は、長丁場になりそうだからな。




結果的に、気を抜いていて良かった。


その後も大した敵に会うこともなく、どんどんと進んでいく。


そして、明るいうちに以前来た洞窟に到着するのだった。


ただ初めての場所で疲れたのか、フーコは寝てしまった。


「兄貴、こっからどうしやす?」


「ここを拠点として探索をしよう。穴の中は寒さを凌げるし、防御面でも使える」


「何か来たら、私かアルスの魔法で一網打尽ですものね」


「そういうことだ。もちろん、交代で外には見張りについてもらう」


話し合いを済ませたら、前にボスがいた場所に行き、簡易拠点を構える。

テントに焚き火、わらで敷いた敷物、これだけでも十分だ。

魔石を採掘した奥には隙間もあるので、火をつけていても安心だ。


「さて、飯を用意しに行くか」


「兄貴が行かなくても、俺らが行きますぜ?」


「ええ、我らにお任せを」


「いつもアイザックとカリオンにやらせちゃ悪いからな。たまには、俺も動かんと」


すると、ニヤニヤしたユキノが近づいてくる。

こういう顔は、俺をからかう時だ。


「でもでも、ご主人様は森の中では役立たずですよ? 」


「おい? 俺は剣も使えるっての」


「戦いじゃなくて狩りなんですってば。平原で襲ってくる魔獣を狩るとは違うんですって。それにご主人様の剣は、基本的には待ちの剣でしょ? ご主人様に任せてたら、夜になっちゃいますよー」


得意げに言う姿は、まるで俺が狩りを知らないような言い方だ。

最近、ご主人様としての威厳がない気がする。

ここらで、教えてやるとするか。


「ぐぬぬっ……いや、そこまで言われちゃ引き下がれんな。ユキノ、お前には一度しっかりと教えてやられはなるまい——この元ボーイスカウトの俺の実力を」


「……ボーイスカウト? なんですか?」


「とにかく! 俺も狩りに出る。ここなら守る分には楽だし、カリオンやエミリアがいればいいだろう。俺とユキノ、どっちが獲物を早く獲ってくるか勝負と行こうじゃないか」


「……えへへ、いいですねー。泣いて後悔しても遅いですからね?」


「男に二言はない」


そして公平を期すため俺とニール、アイザックとユキノという組み合わせになった。


日が暮れる前という期限を決め、俺たちは洞窟から出ていく。







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