第14話 ストーカーの狂気
俺が腕を決めて、更にその男の上に乗って完全に無効化していると、柚達がトイレから戻ってくる。
「ど、どうよ? 完璧じゃない?」
「ん、私の予想通り」
「す、凄いですね……一瞬で形勢逆転するとは……! 物凄くカッコよかったですっ!」
もう分かっていたと言いたげにうんうん頷いている柚とは反対に、キラキラと瞳を輝かせて褒めてくれる姫野芽衣。
お前ら聞いたか!?
あの学年のマドンナから『カッコいい』を貰ったぞ!
ただ、俺は内心の喜びをひた隠し、姫野芽衣に言う。
「ありがとう。でもね、姫野さん。男子に無闇矢鱈に『カッコいい』なんて言っちゃダメだよ?」
「ん、激しく同意」
「は、はぁ……? そうなのですか……わかりました。気を付けます」
俺と柚の指摘に、本気でキョトンとした後、頷いた。
姫野芽衣……貴女にストーカーが付くのも分かる気がする。
これが狙ってならまだしも、無自覚なのだから余計恐ろしい。
今度から同じクラスらしい柚にでも見張ってて貰った方がいいかもしれん。
「それで……何となく理由は分かるけど、お前、何でこんなことしたんだ?」
俺は抜け出そうとして苦悶な表情を浮かべるストーカーに問い掛ける。
既に包丁は、ストーカー手の届かない所に落ちており、更には俺が腕を決めているので奴は動けない。
「ん、返答次第で、警察に突き出す」
「…………」
柚は腕を組んで仁王立ちしながら言い、姫野芽衣は気まずそうに目を伏せていた。
そんな姫野芽衣に男が叫ぶ。
「な、何なんだよ……お前達はッ! 僕と芽衣ちゃんは愛し合っているんだぞ!?」
俺と柚は姫野芽衣に視線を向けるが、ぶんぶん手と首を横に振った。
「そ、そんなこと言っていませんっ! 彼は私と柚ちゃんと同じクラスメイトなのですが……それだけですっ」
「あ、そうなの?」
「そ、そんな……う、嘘だっ……!」
「ん、初めて知った」
「お前……せめてクラスメイトの顔くらいは覚えろよ」
俺が『嘘だ』と現実を理解せず踠くストーカーを押さえながら呆れた風に言うと、柚は首を傾げた。
「ん、私、コイツに興味無い」
「ぐはっ……!?」
何だろう……だんだんストーカーが哀れに思えてきたぞ。
いや勿論ストーキングも俺に包丁向けたことも許されることでは無い。
ただ……好きだと思っていた人にただのクラスメイトと言われ、もう1人の美少女にはそもそも知られてすらいない。
「……お前、可哀想な奴だな……」
「ぼ、僕を憐れむな……! 芽衣ちゃん! 嘘だよね? 僕達愛し合ってるもんね?」
「ち、違います……! そんな事一言も言ったことありません……!」
姫野芽衣がストーカーの狂気に当てられて、少し恐怖に身を震わせながらもはっきりと否定する。
すると、ストーカーは表情を真顔に変え、姫野芽衣を瞬きもせずに見ながら呟く。
「何で嘘つくの? ねぇ? 僕達愛し合っているんだよ? ねぇ? ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ———うぐっ」
「はい、マジ怖いからストップ。と言うかストーカーの闇堕ちとか全く興味無いんで。それととりま大声で叫ぶな喧しい。因みに訊くけど、何を根拠に姫野さんがお前のことを好きだと思ったんだ?」
狂気に身を縮こめ、小さく『ひっ……』と悲鳴を上げる姫野芽衣の姿に、流石の俺も少し乱暴にストーカー口を閉じさせ、原因を聞いてみる。
まぁ大方、先程の様に『カッコいい』とか『頼りになる』的なことを言われたんだと思うが……一応確認しておこう。
すると、先程まで目のハイライトが消えていたストーカーが急に自慢げに話し出した。
「ぼ、僕が数学の授業で誰も分からない所を解いたら、芽衣ちゃんが『中谷君凄いね』って言ってくれたんだ!」
「うん、それで?」
「あ、あと、書道の時に『中谷君、字綺麗だね』とも言われたんだぞ!」
「…………で?」
「だから僕達は愛し合っているんだ」
「……は? え、ちょっ、ちょっと待って。一旦タイム。考える時間頂戴」
え、今コイツが言った中に何か姫野芽衣がコイツを好きだと断定できることあった?
めちゃくちゃ苗字呼び出し、『凄いね』と『字が綺麗』しか言われて無いじゃん。
「うん、今回は全部お前の勘違い! 姫野芽衣はお前のことが好きじゃ無い! 仮に好きだったとしても、ストーカーして俺に刃物向けた時点で嫌われる要素しかないから」
「ん、キモい」
「な、何で……僕はただ……し、信じないぞ……! 屑と僕のことを知らない奴の話なんか!」
「あーもうそれでいいよ。取り敢えず姫野さんは店員呼んできて」
こうして俺達は、話が通じそうになかったストーカーをゲーセンの店員に見せて、警察に連絡して貰い、取り調べ的な事を受けるために俺達は警察署に連れて行かれた。
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人気が出れば1日2話上がるかも。
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