カミハカリの演算 ネオフューチャー・ドラゴンゴッド

碓氷來叶

プロローグ

 イヒヒヒッ……! まことしやかな『龍神・都市伝説』を知っているかい?


 関東地方の内陸に、密かに暮らす龍使いの女がいるという。

 龍使いの背後から放たれる五色の瑞光ずいこうオーラを目撃した者は、龍神から『・契約書』を差し出されるという。

 その激レア契約書にサインすることができたなら、夢が叶うというのである。

 サインには、はらあま岩戸いわとの名水から創られた『オーロラペン(極光ペン)』が使用されるらしい。そのオーロラペンを掴めた者は、契約書に名を記すことができる。

 そうしてめでたく『・契約者』に認定されれば『名声めいせい赫々かっかく』! 富も名誉も栄光も、お望み通りに手中にするというのである。


 ちまたでは『龍使い狩り』が蔓延はびこった。

 彼ら(彼女ら)は『龍神界』と契約するために闇雲に歩き回る。閑静な住宅地や路地裏までをも彷徨ほうこうする。自らの野望成就のために『龍使いの女』を探し求める。擦れ違う若い女を凝視する……。


 西武新宿線・新所沢駅。

 逢魔おうまとき(薄暗い夕方)。龍使いの女は副都心からのくだり電車に揺られ『新所沢』に下車した。西口改札を通り抜けて駅直結のスーパーに立ち寄った。買い物かごは肉、野菜、豆腐、果物……、生鮮食品でいっぱいだ。セルフレジで清算を済ませると大量に買い込んだ食材を手際よくエコバッグに詰め込んでいる。 

 ズッシリ重たいエコバッグをぶら下げた小柄の若い女は軽やかな足取りで歩き出す。向かうのは駅から徒歩十分弱、煉瓦造りの賃貸マンションだ。

 もしやもしや? この女がちまたで噂の…………? 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る