027 > もう一つの仕事(その4)ー カラー
『みなさ~~~ん!?
ベット(※)はもうお済みでしょうか~?!
オッズは大方の予想通りですが、そろそろ受付が終了いたしますッ!
本会場においてハーフタイムベットは行っておりません!
お早めにお願いしますッ!』
両コーナーに
そして今、獣化した双方の獣2頭は、既にリングの対角コーナーで待機させられている。
彼ら獣化した者たちは既に理性と知性を失っており、基本的に制御がきかず、人間の言葉を理解できない。
特に、辰樹から噴出されているΩフェロモンは強烈であり、αだけでなくβであっても理性を根こそぎ刈り取ってしまうため、獣化した者が『ヒト』として目覚めるなら特別な薬を静脈注射するか、死の瞬間しかない。
彼らをコーナーに繋ぎ止めているのは、首に
その支柱と鋼鉄のカラーにはカスケード社と提携企業との技術の
高さがある支柱全体が指向性の高い強力な電磁石になっており、4本の支柱には有刺鉄線が巻かれたロープが4本張り巡らされている。
支柱に流れる電磁力スイッチを握るのは、リング外の天井から吊り下げられたゴンドラにいるレフェリーだ。
デスマッチゆえにタオルが投げ込まれることはないが、勝者が興奮しすぎてリング外に暴走、あるいは逃走するのを防ぐために用いられる。
スイッチが入ると電磁石にはコンマ1秒で1万テスラが流れ込み、いかに凶暴かつ
現在はそれほどの強さではないため引っ張られるほどではないが、双方の獣がその場を動けないほどには強力である。
また、
獣化が
そのため、結局のところ、その使い方も主人の気分次第というところだ────
そして、そもそもの話、希望して獣化する人間はいない。
「それにシテも、康樹はよくやッタネ」
康樹の隣にはいつの間にかチャイナ服を着た、いかにも怪しげな中国人が座っていた。
「何がです?
「日本語……ヒト、悪い、言う、ネ? 副産物……ではない、ネ?」
「……ご想像にお任せしますよ。ああ、ほら、もう始まります」
2人の会話をそば耳を立てて聞いていた岩清水は康樹が誤魔化そうとしていることを知っていた。
辰樹以外の獣の大半は元βだ。
彼らの大半はαに支配されることをよしとするものの、その
だが──βという
それが、この世界の現状であり、世の常でもあった。
辰樹──ドラゴ──はいつものように、初めて見る対戦相手の匂いを嗅いだ。
自分自身が強烈なΩフェロモンを放出しているせいで、他のものには届いていないだろう匂いが、
据えた男の匂い。
男ではない、甘い匂い。
それに寄り添うように、乳臭い匂い。
獣化している最中には、知性も理性もない。と言われているが、ドラゴは他と違っていた。
人としての意識は薄く記憶も失くしているが、他の獣化した者たちと異なり、5歳児程度ではあるが
だから────
(こ、ども……)
その獣から親の気配を感じ取り、リングサイドにいる岩清水を振り返った。
だが、そう思ったのは一瞬で────
『ベッティングタイムが終わりました~!!
さぁ~!! 始まります!!
今日も勝つのはドラゴか?!
それとも新たなる挑戦者か~?!』
ブシャァアアアア!!
霧化した大量の血がリング内に
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※べット(bet):お金を賭けること
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