第60話 アズーロ最後の足掻き
「ウォード、1人の力でダメなら2人だよ。
アナスタシアが俺に強化魔法を掛けてくれた瞬間、体中から力が溢れる感覚がした。
メルローズとアナスタシアが、俺を信じて魔力を振り絞って作ってくれたチャンス。期待に応えてみんなに『ありがとう』という感謝の気持ちと、『好きだ』という想いを伝えようと思った。
「この一撃は全てを斬り裂く!はぁあああっ!」
「グウォオオオ!」
『ガッ』
俺の斬撃がアズーロの首元へ当たり、絆の太刀が止まったと思った瞬間。再び絆の太刀が動き出してアズーロの首を刎ね飛ばした。
『ズズッ、バシュッ!』
首を刎ねられて決着が着く。命が尽きる前に理性の解放状態が解けたようで、真っ黒だった瞳が元の状態に戻った。同時に戦いに敗れたことを悟ったアズーロの口から言葉が漏れる。
「ガハッ……、ク、クリムゾン様……、お前だけは道連れに……
「し、しまった!」
アズーロは、最後の足掻きで俺を道連れにする為に自爆したのだった。至近距離に居た俺に回避する時間はなく、自爆の衝撃に巻き込まれたのだった……。
§クリムゾン視点§
アズーロとの繋がりが消滅した。
「アズーロ、済まない……」
大切な仲間を失い喪失感で押し潰されそうになっていると、俺の隣に突然気配を感じた。
「アズーロは逝ったのね。そして、貴方はかなり具合が悪そうね。大丈夫なの?」
プラチナブロンドに紫の瞳を持つ、神に最も近い存在でありながらも、魔王となったセレンスティア様が声をかけて下さった。その優しい眼差しは、アズーロへの悲しみと俺の体調を気遣うものだった。俺の判断ミスでスタンピードを早く発生させたことで、多くの魔物達とアズーロを失った。全ての責任は俺にある……
「申し訳ありません。全ては不甲斐ない私の責任です」
「うん、少し慌てたね。責任を感じる必要はないの。全ては魔王である私の責任だから、今は回復に努めるのよ」
そう言うと、セレンスティア様の手が俺の肩に触れられると、視界は暗くなり眠りに就いたのだった。
「あの人は何者なのかしら?人でありながら魔人でもある不思議な存在。でも、人を守るのなら敵であることに変わりはないわね。ママを奪った人を私は許さない」
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