第22話 逆プロポーズ?

 朝食の後片付けを済ませると、ハリエット達は前日の精算と買い出しをする為に出かけたので、俺はアナスタシアと勉強を始める。


「じゃあ、歴史の勉強を始めようか」


 食卓に面と向かって座った後に、俺は歴史の本を取り出してアナスタシアに渡そうとすると、首を横に振ってから真剣な面持ちで話しだした。


「あの〜、もっと違うことを教えて欲しいの」

「ん? 違うこと?」


 その時点では、違う科目を勉強したいのかと思っていたけど、アナスタシアの口からは出た言葉は、俺の予想とは違う全く違う内容だった。


「うん、試験勉強じゃなくて、強化魔法や付与魔法のことを、もっと詳しく知りたいの!」

「えっと、それはアナが大きな街に着いたら、ハンターとして頑張るってことなのかな?」


 大きな街に行って学校で学びたいと言ってたけど、ハンターとして自分の天賦が役に立つと判ったから、ハンターとして生きることにしたのかと思ったので、気が変わったのか確認をすると、さらに予想外の答えが返ってくる。


「そうだけどそうじゃないの。私はハンターとしてウォードと一緒に旅をしたい、前に私のことを『欲しい』と言われてから、私の中でウォードの存在が大きくなってきたの。だから、ウォードに私のことをもらって欲しいの!」


 アナスタシアから『私のことをもらって欲しいの!』という衝撃的な言葉を聞いて固まる。


(えっ、頭の整理が追いつかないぞ……)


 俺の思考回路が停止していると、パミュルが大笑いしながら話しかけてきた。


『あははっ、ま、まさか、プロポーズをしてくるとは思ってなかったわ。うふふっ、アナってここまで積極的だったのね。うん、凄く可愛らしいわね。ふっふふふ〜』

『プロポーズって……、未成年なんだけど?』

『この場合は婚約になるのかしら?』

『どうしてこうなるの?』

『だから、誤解を招くって言ったでしょ』


 前にパミュルに指摘された通りで、完全に誤解されていたようだ。そして、完全に固まってしまっている俺に対して、アナスタシアが不思議な表情をしながら声をかけてきたことで、俺は我に返ったのだった。


「あの〜、こんな子供じゃダメ?」

「はっ、いや、アナは凄く可愛くて素敵だよ。でも僕達は未成年だしさ、それにハリエットが居るのは知ってるよね?」

「うん、たくさんの妻を持つ人は珍しくないし、ウォードにはサーシャさんにメルもいるじゃない?」


 うん? サーシャとメルローズの名前が出てきたことに驚いてしまう。同じパーティーメンバーとして旅はしてるけど、俺達の間にそんな関係はないと思うんだけど……。


「どうして2人の名前が出てくるの?」

「えっ、ウォードのことを見る2人の視線は、間違いなく恋する女の目をしているよ?」


 アナスタシアから告げられた言葉に、俺の思考回路は再び停止したのだった。

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