第13話 周りの目

 指示役として討伐に復帰する当日、最初にするのはアナスタシアのハンター登録なので、ヤンカー市にあるハンター協会へ向った。


 ハンター協会の建物へ入ると、アナスタシアに視線が集まる。これはメルローズの時にも思ったけど、視線を向けられる者には耐え難い状況だ。早く手続きをしてこの場から去ろうと思ったので、受付に声をかけて手続きを始めようとした。


「おはようございます。彼女のハンター登録と輝煌星きこうせいへのパーティー登録をお願いします」

「あっ、はい、その子をパーティーに加えるんですか?」


 受付は直ぐに用紙を渡さずに、アナスタシアの方を見ながら確認をしてきた。俺はその態度に怒りを覚えながらも冷静に対応する。


「そうですよ。彼女を登録できない理由があるんですか?手続きが判らないのなら、別の職員に代わってもらえますか?」

「いいえ、特に問題はありません。申し訳ありませんでした。こちらが書類になります」


 俺の言葉を受けて、慌てて必要な書類を用意して手渡してきた。住民だけではなく、ハンター協会の職員ですらこの態度なんだから、アナスタシアが嫌になるのがよく判った。


 アナスタシアが書類に記入している間、俺はハンターカードを渡して、情報料と振込があったのかを確認してもらうことにした。


「このカードに情報料と利益分配金の振込があると思うので、確認してもらって良いですか?」

「かしこまりました」


 俺の隣でアナスタシアが書類に記入してるのを見ていると、受付が明細書を持って戻ってきたので、内容を確認する。


【情報料 タレビサ魔洞窟 金貨50枚】

【情報料 ルクンナ洞 金貨250枚】

【利益分配金 金貨200枚】


 ルクンナ洞の情報料と利益分配金がかなり増えて、振り込まれた金貨が500枚という凄い金額に驚いてしまった。俺が明細書を確認していると、受付が話しかけてきた。


「あの〜、ウォードさんはなにをされてる方のんですか?」


 高額な振込を見れば聞きたくなるのは仕方ないけど、個人のプライベート領域に踏み込む行為は、ハンター協会の規則に違反するはずだ。


「ハンター協会の職員なら、今の発言が規則違反だと判ってますか?僕が苦情を言えばあなたは失職するんですよ」

「!?」

「知らなかったようだから、今回は見逃すことにしますが、他の人がこのことを知っていたら、ハンター協会に報告するのでそのつもりで」

「か、かしこまりました」


 軽く注意をしてると、アナスタシアは書類の記入が終わったようなので、受付に渡して手続きを急がせると、『あっ』という間に手続きを終わられせてハンターカードを持ってきた。


「ほ、本当に申し訳ありませんでした。どうか報告だけは……」

「えぇ、他の人に伝えなければ報告はしません。そのことを忘れないように」

「はい、ありがとうございました」


 アナスタシアのハンター登録が終わったので、この息苦しい場所を直ぐに後にして、討伐へと向かったのだった。

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