第49話 泉の主①

 ガレリアを発ってから4日目。


 ルート上の近くに泉が近くにあったので、ハリエットの提案で水浴びをすることになった。


 ルートを外れて林道を通って泉に向かうと、少し開けてくると綺麗な泉が見えてきた。ハリエットが適当な場所に家馬車ルーロットを停めた。


 全員が家馬車ルーロットから降りると、先ずは泉の周辺を探索して、危険な場所や魔物が居ないかを確認することにした。


「ハリエットはここに残って、パミュルとサーシャさん、僕とメルローズに分かれて泉の周辺を探索するよ」

「「OK!」」


 周辺を探索すると獣道がいくつかあったので、動物か獣タイプの魔物が居ることが判ったけど、探索中に鉢合わせることはなかった。早朝か夜更けのタイミングで、泉へ水を飲みに来るのかも知れないので、そのことを頭に入れておく。


 俺達が探索を終えて家馬車ルーロットへ戻ると、パミュル達も探索から戻っていたので、お互いの探索結果を報告しあう。


「僕達の方は獣道を確認した程度かな?動物か獣タイプの魔物が、水を飲みに来るかも知れないから注意は必要かな。そっちは何かあったの?」

「私達の方は水辺に骨が散乱してるのを確認したの。結構な数の骨だったから、泉に捕食生物が居るかも知れないわね」


 パミュル達の方は水辺に骨を見つけたようで、捕食者となる生物がいる可能性が出てきた。


「そうか、直ぐには水浴びはできないね。何か餌になる物を用意して釣りをしてみようか?安全を確認できるまでは我慢してね」

「そうね。でも、釣りなんて楽しそうだね!」


 俺が安全確認を終えるまでの間は、水浴びは禁止と伝えると、ハリエットは少し残念な表情になったけど、釣りというイベントをすることで表情が明るくなった。


「釣りをするって、道具はあるんですか?」


 メルローズは俺が釣りと言ったので、釣り道具なんて持ってるのか気になったようだ。


「今から竿と釣針を作るし、魔法鞄マジックバッグを作った時に余った糸があるから問題ないよ」

「ウォードさんは何でも作れるんですね」


 俺がこれから作ると言うと、驚きながら返事をするメルローズの表情が可愛かった。竿を作るには素材となる木が必要なので、一緒に探さないかと誘ってみると、嬉しそうな顔で答えてくれた。


「ははっ、何でもとはいかないよ?理屈の判るものしか作れないからね。じゃあ、竿を作るのに適当な木が必要だから、一緒に探してくれる?」

「はい、喜んで!」


 素材を無事に見つけて戻ると、俺は釣竿作りに取りかかる。他にすることがないのか、みんなの視線が集まる中の作成は非常にやりにくいものだった……。


 それでも2本の竿を作りあげると、竿に釣針の付いた糸を縛れば完成。あとは餌を付ければいつでも釣りができるので、みんなお待ちかねの釣りイベントを始めることにする。



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