第25話 襲撃の目的
「痛っ……」
痛みで目覚めて周りを見渡すと、建物の中に居るという事が判った。
「ウォード、良かった目が覚めたのね」
「ハリエット……ここはどこ?僕はあれから」
「ここはガレリアのハンター協会の医務室だよ。盗賊の襲撃の後から2日経ったのよ。ちょっと待ってね、みんなを呼んでくるよ」
「うん」
ハリエットは、俺が目覚めた事を伝える為に医務室を出ると、外で待っていたパミュル達が直ぐに入ってきた。その中にはメルローズも含まれていた事に驚いた。俺は最後まで任務を全う出来なかった事を、謝罪しようと身体を起こそうとすると、慌てて声をかけてきた。
「ウォード様、とうかそのままで!命に別状はなくても大怪我を負われてるのですから」
「すみません。怪我を負った為に任務を全う出来ませんでした」
メルローズの言葉に甘えて、ベットで横になったまま謝罪をすると、『ブンブン』と首を横に振ってから逆に申し訳無さそうに深く頭を下げたのだった。そして、その口から謝罪と今回の襲撃の原因を話してくれた。
「本当に申し訳ありませんでした。今回の襲撃を企てたのは私の父でした……私を攫ってガレリア学園への入学を阻止する為との事です……」
そこまで口にすると一旦話が止まる。その先は想像がついたので俺がその続きを話す。
「ガレリア学園へ入学をして、メルローズ様の美しさが上位貴族の目に止まり、婚姻の申込みがくれば断れないからですね?」
「その通りです。どうして判ったのですか?」
「ノースホランで聞いたメルローズ様の評判が、実際に接してみると全く違った事と、父君はあれだけ溺愛されてるのに貴族教育を怠っていたので、その可能性があると思いました」
夫妻の間に他にも子供が居れば、このような事にはならなかったと思うけど、企てた襲撃は実際に起こってしまった。俺はその後の事が気になったので、メルローズに事の顛末を確認した。
「結局、あの後はどうなったんですか?」
「キシリアを拘束して、御者の2人に馬車を移動させてハンター協会に3人を引き渡しました。そして、キシリアが全てを告白しました。なので、父は罪を償う事になりますので、コスター男爵家は爵位を剥奪されると思います」
メルローズは身内の罪を隠さずに公にした。その事で自分が貴族籍を失い平民落ちするのに……金を積めば俺達を黙らす事も出来たと思うのに、父の犯した罪を家族として重く受け止めた覚悟は、尊敬に値すると思った。
(平民となって苦労する事が多いと思うけど、メルローズには頑張って欲しいな……何か力になれる事があれば良いんだけどな)
そう思いながら、俺は応援する意味を込めてメルローズに声をかけた。
「これから大変でしょうが、僕に力になれる事があれば、何でも言ってくださいね」
俺がそう言うと、ハリエット達が顔を見合わせて笑っていた。何か可笑しい事を言ったのかと思ったけど、全く理由が判らずに困惑してると、メルローズの口から耳を疑う内容の言葉が出たのだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます