第四章 帰郷編

第1話 サーシャの訓練①

 デルポト市からノースホランへは馬車を使わずに、徒歩での移動を選択した。


 急いで行くのなら馬車だったけど、サーシャの〚射術師〛の訓練と〚植物魔法〛が戦闘に使えるのか試すのと、野営を経験する為の選択で10日ほどの旅路となる。


 今はサーシャと〚射術師〛について話しをしながら街道を進んでいる。


「サーシャさんは、〚射術師〛を使って戦闘経験はあるんですか?」


 俺が質問をすると、慌てながらリュックに手を入れて、アイテムを取り出して説明してくれた。


「は、はい、このスリングショットを使っての経験がありますが、スライムを数匹倒した程度なので未経験と同じです」

「少し見せてもらっても良いですか?」

「どうぞ」


 俺はスリングショットを受け取って、構造をじっくりと見ながら動作確認をした後に、サーシャにいくつかの質問をする。


「これを使っての感想って覚えてますか?」

「そうですね。私は筋力が低いのでゴムを引く時に本体がブレやすい事ですね」


 俺は言われた通りにゴムを引くと、確かに本体を持つ左手に負荷が掛かってる事が気になった。これは強く引けばさらに負荷が掛かるので、強いショットを撃とうするほどに、ブレが大きくなって命中率が下がると理解したので、これを解決する事を最優先に考える事にした。


「判りました。ブレを抑える方法を考えるので、それまではこの状態で使ってください。次は、射撃に使うのは弾丸になるんですか?」

「ストリング部分がゴムになってるので、弓のように矢を撃つ事は出来ませんからね」

「例えば貫通力上げるなら、先端を尖らせる事でかなり威力が上がると思うのですが、どうですかね?」

「そのタイプは使った事がないので、何とも言えないですね」

「判りました。その辺りも試す事にしますね」


 そう言った後にスリングショットを返して、話しをしてた為に歩くペースが遅くなってたので、歩くペースを早くして先を急いだ。


 かなりの距離を移動して、野営ポイントが近付いてくると、街道から離れて平原に入って行く。もう少し歩けば開けた場所と水場がある所で、魔物が現れた。


「止まって、暴猪ワイルドボアが居るけど、まだ気付かれてない。サーシャさんはスリングショットで先制攻撃を、ハリエットはこちらへ向かって来たら弓で仕留めてね」

「は、はいっ!」

「OK!」


 出来るだけ距離を詰めてから、サーシャはスリングショットを手にして、弾丸をセットしてから狙いを定めて射撃する。俺は射撃までの動作を横目で見ながら弾丸の行方を見届けた。


『シュン』

『バチン!』

「フゴッ、フゴォオオオ!」


 弾丸は暴猪ワイルドボアに当たったけど、威力は弱く大きなダメージを与える事は出来ず、こちらの居場所を知らせる事になった。

 猛然と突進してくる相手に、ハリエットは冷静に矢を射って額を撃ち抜く!


『ビシュッ!』

『ズバンッ!』

「ブヒィィィ……」


 額を撃ち抜かれたけど、突進の惰性で少し動いた後に倒れて動かなくなる。ダンジョンと違って消滅しないので、手早く毛皮と肉を捌く作業にかかる。


「凄い、たった1撃で倒すなんて……」

「スリングショットの威力を調整すれば、もう少しダメージを入れられるかな?野営の時に少し調整しますね」

「はい、お願いします」


 久しぶりに魔物を捌いたので、少し手間取りながらも何とか捌き終えてから、暗くなる前には野営ポイントへ到着したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る