第91話 猛烈なダッシュでやって来る

 鬼の棲家でのマッピングを終えて、ダンジョンを後にしてハンター協会の出張所で精算をする事にした。疾風の腕輪は手元に残して、魔石と宝石を買い取ってもらう。


「すみません、ダンジョンでドロップした魔石とアイテムの精算をお願いします」

「かしこまりました。こちらへカードとドロップの提出をお願いします」


 俺はブラウンの髪を後に束ね、髪色と同じ瞳をした受付嬢に声をかけると、丁寧な言葉遣いで対応をしてくれたので、テーブルの上へ魔石10個と橙石オレンジトルマリン2個を置いた。受付嬢はメガネを掛けてテーブル上の物を鑑定する。


「鑑定メガネをお持ちなんですね?」

「ハンター協会からの支給品ですよ。こんな高価な物は個人ではなかなか持つ事は出来ないですからね。確認は済みました詳細は次の通りです」


 受付嬢から渡された明細書を確認する。


【魔石】銀貨5枚×10個 銀貨50枚

【宝石】橙石(小)金貨15枚×2個 金貨30枚

【合計】金貨30枚 銀貨50枚


 宝石が結構良いお金になるので、この調子なら鬼の棲家でも十分にやって行けそうだと思った。俺は明細書にサインしてから、生活に必要なお金を受け取りたいので伝えた。


「確認しました。後は金額5枚を受け取って、残りはハンターカードに預けておきますね」

「かしこまりました。少々お待ちくださいね」


 手際よく手続きをして、直ぐにお金を持って来てくれた。


「お待たせしました。金貨5枚と明細書の控えになります」

「ありがとうございました。すみませんお名前を聞いても良いですか?」

「私は【サーシャ】と申しますが、何か対応に問題がございましたか?」


 名前を聞いた事で、対応が悪かったと思わせたみたいで、申し訳なく思いながらも、名前を聞いた理由を説明しておく。


「いいえ、素晴らしい対応でしたよ。サーシャさんは鑑定メガネを支給されほど優秀な方だと思ったので、次もお願いしようかと思いました」

「そうなんですね。ありがとうございます!」


 不安そうな表情から『ぱぁ~』と明るい表情になって元気よく返事してくれた。


「サーシャさん、これからもよろしくお願いしますね。ではこれで失礼します」

「ウォード様、お疲れ様でした」


 サーシャとの挨拶を済ませてからハンター協会を後にして、アパートへと戻って体を休める事にした。アパートへ向かって戻っていると、ハリエットがサーシャについて確認してきた。


「サーシャさんの事が気になったの?」

「さっき言った通りだけど?僕達はドロップが多いからさ鑑定出来る人ってありがたいでしょ?」

「えっと……それだけ?」

「それ以外に何かあるの?」

「ううん、なにもないよ!」


 ハリエットはそう言うと俺の腕にしがみ付いてきた。サーシェの名前を聞いた事で、彼女へ興味があると思わせたのかな?なんて思った瞬間にあの人の声が聞こえてきた……


「ウォードさーーーん!」

「はぁ~、あの人には注意をしても意味がないのかな?」

「あれは本能で動いてるから何を言っても無駄だと思うわよ?」


 猛烈なダッシュと共にメリルが近寄って来たのだった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る