第32話 幸運に導かれて
➖・➖・???の視点・➖・➖
「はっ、ひゅ、はっ……」
仰向けに倒れた少年は呼吸もままならい状態だったので、駆け寄って容態を確認する。
「あっ……お兄ちゃん?」
少年の顔を見て思わずそう言ってしまった。私の記憶にある大好きだったお兄ちゃんに瓜二つだったの。名前もウォードと言っていたので、思わず生きていてのかと間違えそうになった……
「ウォード!」
私から少し遅れて3人がやって来て、少年が血塗れで倒れてる姿を見て、女性と女の子は取り乱したの。
「やだぁああ!ウォード!」
「ウォード君嫌ぁあああ~!」
「治療に集中出来ないわよ!落ち着きなさい!」
気が散ると治療に集中出来ないので、注意をして静かにさせてから〚白魔術師〛で治療を始める。傷口を両手で押さえて魔法を唱えた。
「君は絶対に死なせないよ。〘
魔法を唱えると、白光して胸元の傷が徐々に塞がり出血も止まった。次はうつ伏せにして背中の傷を治療する。
「胸ほど傷は深くないね〘
胸元と同じように白光して傷が徐々に塞がり出血が止まったけど、失った血だけは〚白魔術師〛を以てしても取り戻せない。
ここから先は、ウォード君の生への渇望に任せるしかないの。
「私は出来る限りの事をしたわ。嘘を言わずに本当の事を言うわね。助かる確率は20%かな?出血が多過ぎて生きてたのが奇跡よ」
「奇跡……それならウォード君は助かるわ。だって〚幸運〛の天賦を持ってるんだもん!〚白魔術師〛がその場に居合わせたのも〚幸運〛が導いてくれたのよ」
「そう、取り敢えずウォード君を安静に出来る場所へ連れていきましょう」
その後、ウォード君が住んでる家へと運んでベッドに寝かせた。私に出来る事はもうないので帰る事にする。
「では、私は失礼するわね。あっ、そうだ2週間は絶対安静にする事これはは守ってね」
「あっ、あの……助けて頂いてありがとうございます。貴女のお名前を教えて頂けませんか?」
「私はラミュル.レーカーよ」
「ラミュルさん、この御恩は忘れません!」
「ウォード君は無茶をするタイプみたいだから、気をつけてあげてね」
家を出た後は、村にある宿に行って部屋を借りて一息つく。
「ふぅ~、全力の治療は疲れるわね……スタンピードがあったあの時、〚白魔術師〛としてあの場に居る事が出来れば……お兄ちゃん逢いたいよ」
私はこの修行の旅が終わったら、兄が眠るヤンカー領へ戻るの。兄が守ろうとした物を、私が兄に代わって守ってみせる。
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