消失する隣人の謎

O.K

第1話:消えた隣人

アパートに引っ越した主人公、緑川雅人(まさと)は新生活を始めるために新しい場所へ足を踏み入れた。静かな住環境と手頃な家賃が魅力的だったが、彼はすぐに不気味な出来事に巻き込まれることになるとは知る由もなかった。


初日、緑川は隣人の存在を知るべく、隣の部屋にあいさつしに行くことに決めた。彼は隣人の名前を知らず、どんな人物かも知らなかったが、友好的な態度を示したいと思っていた。隣の部屋に立ち、緑川はインターホンを押した。しかしながら、数分が過ぎても誰も応答しなかった。彼は初めは気にせずに、もう一度押してみることにしたが、やはり無視された。


緑川は疑問に思いつつも、そのまま部屋に戻ることにした。しかしながら、その後も続く日々で、緑川は隣人の部屋から奇妙な音が聞こえることに気付いた。夜遅く、彼の部屋に静寂が訪れる中、突然にして聞こえてくる足音や奇妙なざわめきが耳に入ってくるのだ。緑川は慣れない環境に戸惑いながらも、隣人の不可解な行動に疑念を抱くようになった。


ある日、我慢の限界に達した緑川は、我々しさを抑えて隣人の部屋に向かった。部屋の前に立ち、ドアをノックしたが、やはり誰も応答しなかった。怒りと不安が心を支配し始めたが、緑川は隣人に注意を促すために、声を大にして「静かにしてください!」と叫んだ。しかしながら、その声も虚しく、部屋の中からは一向に反応がなかった。


緑川は困惑と怒りを感じつつも、怪奇的な現象に立ち向かう決意を固めた。彼は他の住人に相談することも考えたが、なぜか口をつぐんでしまうのだった。何かが彼を言葉に詰まらせるように導いているような気がした。そして、緑川はある晩、隣人の部屋に一度だけ鍵を使って侵入することを決意した。


部屋に入ると、彼は衝撃の光景を目の当たりにした。部屋は完全に空っぽで、家具もなく、壁も無地だった。どこからともなく聞こえてくる音やざわめきも、部屋の中からではなく、どこか遠くから聞こえているようだった。緑川の背筋は寒気で凍りつくような感覚に襲われた。部屋の中には何の兆候もなく、存在するはずの隣人は何故か存在しないかのようだった。


緑川は悪夢のような体験に呑み込まれ、彼の心は恐怖に包まれたままである。彼は自分自身が狂気に蝕まれているのではないかと疑念を抱きながら、この奇妙なアパートでの生活に縛り付けられた。


そして、ある晩、緑川は突然、自分自身が部屋の中に閉じ込められてしまったような感覚に襲われた。壁が近づいてくるような圧迫感と、遠くで響くような異音が彼を襲った。恐怖に駆られた緑川は叫び声を上げ、必死に部屋から逃げ出そうとしたが、どんなに走っても壁が近づくばかりで逃れることはできなかった。


緑川はいったい何が起こっているのか、どうやってこの異次元のような状況から逃れるのか、誰にもわからない。彼は存在しないはずの隣人との遭遇が、彼の心を奪い去り、恐怖の闇に包まれたままだった。

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