合戦 

弓納持水面

第1話 兵力比 視点魔王

「陛下。陛下は此度の合戦どう見ますか?」

馬廻り兼、親衛隊隊長兼、剣術指南役。

竜人の竜胆が尋ねてくる。

爺は自分の部隊に戻っているので、本陣にいる唯一の将。

圧倒的に人材が足りない。


「兵力では話にならないんだよ」

手元の兵力が書かれたメモを見る。


魔王討伐軍

北方騎士団6000

聖神教団兵10000

傭兵団3000

聖神騎士団5000

諸王国軍連合25000

計49000


魔王軍

魔王親衛隊1500

セバス公軍3000

平民弓箭兵6000

リザードマン傭兵3000

ケンタウロス騎兵3000

ゴブリン5000

高機動ゴーレム2

計21502


「爺は『デポ殿もゴーレムなどではなく傭兵の1000も送ってくれれば良いものを』って言ってたんだよ。」

デポの募った資金で今の兵を掻き集めた。

それでも兵力差は倍以上。

爺に習う兵法書には兵が少なければ、戦わないと書かれている。


「では、陛下は負け戦とお考えですか?」


「力比べしたら負けなんだよ」

そう正面から戦えば負ける。


とはいえ、戦術級大魔法で吹き飛ばしたりすれば世界が滅ぶまで戦略級大魔法の打ち合いになるだろう。

そうなれば勝者は環境適応と繁殖力に勝るゴブリン。

全ての文明文化が吹き飛んだ後、ゴブリンが漁夫の利を得るとシミュレーションは告げている。


「敵将を暗殺してまいりましょうか?」

竜胆は竜の島の忍びの一族から登用した将だけあり、裏仕事も長けている。

夜が明ける前に刺客を送るぐらいの手筈はあるのだろう。

だが今回は駄目だ。


「せっかくの無能な総大将を殺しちゃ駄目なんだよ。それに力比べで勝たないと諸侯に舐められっぱなしなんだよ」


竜胆は少し不思議な顔をした。

武勇に優れ、策にも長けた有能な将だが、それ故に合理的。

不合理な言動を訝しんでいるのだろう。


「大魔法で雨を降らせたし、陣地も築いた。後は力比べするだけなんだよ。」


「明日、朝一で工兵ゴブリンに離脱命令を伝えるんだよ。」

竜胆が一礼すると伝令に命を伝えにいった。


契約している冠が小言を呟いたが、無視する事にした。

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