小話 オレオレ詐欺ですか?

「んーっ」


 日が昇り切った昼過ぎ、重い体を持ち上げて、固まった体を伸ばす。

 昔は睡眠なんていらなかったが、このクソみたいな状況のせいで今は眠くて仕方ない。


「今日はオフ日だな」


 カレンダーを見て、今日の欄に自分でつけた丸印があるのを確認する。

 ノームたちには反対されているが、ギルドは週休二日制だ。もちろん、そこには俺も含まれる。


 トゥルルルル

 二度寝しようかと思った矢先に電話が鳴る。取りたくねぇと思いつつ、緊急事態だと困るので渋々メニューを開いた。これでもトップなんだ。


『おはようございます。もう出勤時間ですよ?』

「おはよう。今日のギルド長はお休みですよ。要件それだけなら切るが?」


 通話相手は三つ編みだった。いつも書類を持って追い掛け回してくるので、休みの日には関わりたくない。


『わー! 待ってください! 王都からの伝言です』

「あー、太陽の件か」


 確か、あっちでの依頼に行かせたっけ。あいつもそろそろDランクになっとかないと、今後に相当響く。

 あっちの嬢ちゃんが業を煮やしている頃だ。


『先ほど三谷ご夫妻の荷馬車が到着したそうです』


 依頼さえこなしてくれれば特に用はないが……。


「四日後はあいつの誕生日か……」


 カレンダーのケーキマークが目に留まった。


『え?』

「何でもない。太陽がギルドに来たら教えてくれ。あっち行くわ」

『ご自分で王都の子に連絡とってくださいよ~』

「断る。今日はオフだ」

『もおー!』



トゥルルルル


『はい』

「おう、俺だ」

『オレオレ詐欺ですか?』

「んな訳ねぇだろ」

『冗談です』


 三つ編みとの通話を切った後、仕込みの為に茉莉花に電話した。


「お前が会いたがってたやつ、今王都に来てるぜ」

『本当ですか!』


 今年もあれを探すつもりだろうし丁度良い。太陽が受けている依頼の話をすると、思った通り食いついた。


「明日の朝にでもギルドで依頼探してると思うぜ」

『行きます! 捕まえます!』

「お前今日バイトか?」

『はい』

「夕飯はそっちで食うように言っといてやるよ」

『ありがとうございます!!』



「さてと。俺も一回会っとくか」


 着替えは……。まぁ、このまんまで良いか。なんたって今日はオフだ。

 もう一度伸びをしながら、上下セットの部屋着のまま執務室に向かった。

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