別に大きい街ってわけじゃないのに
ラミカがハッキリと追っ手が来てないと言ってくれたから、割と心に余裕を持って進めて、名前も知らない街が見えてきた。
「上から行くか」
そんな名前も知らない街を遠目で見ながら、俺はそう言った。
ラミカの方は正直知らないけど、俺は身分を証明できるものを持ってないから、街に入るのに金がかかる可能性があるし、単純に誰が通ったかを記録にも残すと思うから、下手な痕跡は残したくないしな。
「ん〜。どうせ〜、バレると思うけど〜」
だからやめて? さっきからなんでラミカはそんなに俺に現実逃避をさせてくれないんだよ。
俺だって分かってるよ。相手はもしも追ってきてるのなら、相手は公爵家とSランク冒険者なんだし、どうせバレるってことくらい分かってるよ。……でも、バレない可能性だって無いわけじゃないだろ。
だから、いいんだよ。
「行くぞ」
内心でそんな不満を口にしながらも、俺はラミカと一緒に気配を消したまま、誰にも見つからないように街の中に入った。
「よし、無事に中に入れたし、さっさと食料を買い込むか」
さっさと買ってさっさとまた街を出る。
これが一番いいだろうから、俺はそう言った。
夜にでもなったら、警戒が強くなってバレずに街を出るのが難しくなるからな。
……特に俺が。……うん。俺が見つかる。ラミカは絶対見つからない。
一応俺も世間一般的には弱い方じゃないんだけどな。……ラミカやリアがおかしいだけであって、俺は弱い方ではないんだよ。
……定期的にこうやって思い出しておかないと、ほんとに自信をなくすからな。別に俺が自信をなくしたってどうでもいいんだけどさ。一応な。
「……ん〜、勝手に街に侵入したの〜、バレてるかも〜」
そう思っていると、突然ラミカが呑気な口調でそんなことを言ってきた。
嘘だろ? 見られてる気配はしなかったぞ。
「魔道具だと思うよ〜」
そんな俺の思っていることを察したのか、ラミカはそう言ってきた。
……マジかよ。別に大きい街って訳じゃないのに、侵入者を知らせる魔道具なんてものがあるのかよ。
と言うか、ラミカはラミカでよく気がついたな。
事前にそういう情報を知っていたのならともかく、絶対知らないだろうし、ありえないだろ、普通。
……いや、ラミカに普通を求めるのなんて今更か。
「どんな魔道具か分かるか? ただ侵入者がいるってことを知らせるだけなのか、その侵入者の顔や見た目がわかるタイプなのか」
「……多分だけど〜、顔とかがわかるタイプだと思うよ〜」
よし、終わったわ。
……正直、今すぐにでも走って街の外に行きたいけど、結局食料が無いし、早く食料を買って直ぐに逃げよう。
「もう盗んだら〜?」
「……それは、やめておこう」
悪人相手以外にもう自分の手を汚す気はないから、俺はそう言った。
ラミカも別に本気ではなかったみたいで、そんな俺に何も言わずに、すぐに頷いてくれた。
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