ちゃんと帰ってくれるのかよ
やっと話が終わった。
今更だけど、なんでこんなことになってたんだっけ。
……正直、二人の殺気が強すぎて、マジでなんでこんなことになったのか覚えてないんだけど。……あー、いや、あれか。なんか俺がフィオラの頭を撫でてたら、言い争ってたはずのリアとラミカが近づいてきて……それで、ラミカにフィオラを助けてもらった話を出されて、キスをさせられてリアが怒った。……みたいな感じか。
「……そういえばなんだが、フィオラは大丈夫だったのか?」
そう思っていると、話が終わったからか心に少し余裕が生まれた俺は、フィオラに向かってそう聞いた。
一緒の空間に居たんだし、フィオラもリアとラミカの殺気を当てられてると思ったからだ。
フィオラは戦闘職な訳じゃなくただの聖女。言わばヒーラー、サポートタイプだ。
「? 何が、ですか?」
だから、急に心配になってきた俺はそう聞いたんだけど、フィオラは小さく首を傾げながら、そう聞いてきた。
……あの二人、まさかとは思うけど、あれだけキレてたくせにちゃんと殺気をコントロールして、俺だけに向けてきてたのか? ……なんでそんな器用なことが出来るんだよ。と言うか、そんなことが出来るのなら、お互いにだけ殺気を当ててフィオラと一緒で俺にも向けないでくれよ。めちゃくちゃ怖かったんだからな!?
「……いや、大丈夫なら別にいいんだ」
「そうですか?」
「ああ」
そう思いながらも、俺はそう言った。
だって、もう終わった話なんだし、別にいいか、と思ったから。
これで俺が余計なことを言って、またこの話を掘り返されても困るからな。
「……別に、帰って欲しいって訳では全然ないんだが、リアはいつまで居るんだ? ……ほら、やっぱり、ヘレナが心配だし、アリーシャだって居るだろ?」
そう思いながらも、やっぱり逃げたい俺は、リアに怪しまれないようにしつつも、そう聞いた。
「……大丈夫。アリーシャも強くなってるから、ずっと一緒にいる」
「……い、いや、仮に、仮にそうだとしても、ずっとはまずいだろ。公爵に怒られるぞ?」
いくら強くても、公爵家に抱えられてる冒険者なんだから、俺はそう言った。
アリーシャも強くなってるとかいうかなり嫌な言葉が聞こえてきたような気がしたけど、それを無視しながら。
「……大丈夫。明日には合流出来るから」
「合流……? 帰るってことか?」
「そう」
そうなのか。なんだ。ちゃんと帰ってくれるのかよ。
だったら、まぁ一日くらい逃げる時間が遅くなったっていいか。
そう思った俺は、またリアとラミカが喧嘩をしないように気を配りつつも、フィオラを護衛する時間まで適当に過ごした。
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