【旧作】ヒロイン二人を誘拐して即殺されるモブに転生したと気がついたのはヒロイン二人を誘拐してる最中でした

原作ではそんな感じじゃなかっただろ

　ヘレナが帰ってしまった。改めてフィオラに一言言ってから、本当にリアを置いて、一人で帰ってしまった。

　え？　冗談だろ？　公爵令嬢だぞ？　護衛無しで行かせるとか、正気の沙汰じゃないだろ。

「……リア、今からでも、ヘレナを追いかけた方がいいんじゃないか？　……いくら強くなったと言っても、やっぱり危ないだろ」

「大丈夫」

　リアが居ると逃げられないから、なんとかヘレナの護衛としてどこかに行ってくれないかと思ってそう言ったんだが、リアは一言そう言ってきた。

　違う。俺が大丈夫じゃないんだよ！

「私の元後輩くんは優しいから、遠回しに言ってるけど〜、お前の事が嫌いだから〜、どこか別の場所に行って欲しいんだよ〜」

「……うるさい。そんなわけない」

　そう思っていると、久しぶりに喋りだしたラミカがまた余計なことを言って、リアと言い争いをしていた。

　なんでこの二人はこんなに相性が悪いんだろうな。

　ラミカが余計なことを言ったせいで……いや、ラミカが余計なことを言ってなかったとしても結果は変わらなかったかもしれないけど、とにかく、もうリアがヘレナを追いかけてくれることは無いと察した俺は諦めて、限りなく気配を消しながら言い争っている二人から離れることにした。

　いや、だって巻き込まれたらめんどくさいし。

「少し、よろしいでしょうか？」

　そう思って、言い争いをしている二人から離れると、近づいてきたフィオラにそう聞かれた。

　……まぁ、どうせ逃げられないんだし、別にいいか。

「なんだ？」

「今更かもしれませんが、あの方はどなたなんでしょうか？　昨日までは居ませんでしたよね？」

　あー、ラミカのことを言ってるのか。

　俺もラミカの気配を察知したり出来ないから、分からないけど、昨日も一応近くに居たとはいえ、実際には会ってないもんな。

　……と言うか、俺も今更なんだけど、フィオラの暗殺を狙ってたって奴はどうなったんだ？　……いや、ラミカが何も言ってこないってことは、上手く始末出来たってことか。

「……俺の、まぁ、ちょっと前の働いてた？　って言っていいか分からないが、元先輩だよ」

「……それだけ、ですか？」

　俺がそう言うと、フィオラは少し不安そうにして、そう言ってきた。

「？　そうだけど」

　まぁ、ちょっと……かなり怖い先輩ではあるけど、ちゃんと尊敬はしてた先輩だし、俺は頷いた。

「そうですか。……また、頭を撫でてもらってもいいですか？」

「いや、それは……」

　すると、どこかフィオラは嬉しそうにしながらも恥ずかしそうに、そう言ってきた。

　昨日までの洗脳の魔眼に影響を受けていた時ならともかく、もう洗脳の魔眼の効果は切れたし、ラミカやリアの前でそんなことをすれば、どうなるかは正直目に見えている。

「……もしかして、効果、切れてますか？」

「……何の話だ？」

「……使ってもいいって言ってくれましたよね。大好きです」

　なんでフィオラがこんなヤンデレみたいになってるんだよ。原作ではそんな感じじゃなかっただろ、と思うと同時に、フィオラの目がまた、赤色に光り出した。

　それと同時に、さっきまでのそんな疑問が消えて、俺はフィオラの頭を撫でていた。