第14話 麻薬組織シンリーアとの接触

 ある日、チームメンバーに招集がかかる。招集はローラからだ。

「シンリーアの2名が王都に入ったと連絡を受けました」

「いよいよだね。気合い入れていきますか」

「でも、どうやってその2人を見つけるんすか?」

「似顔絵持って探し回ればいいんじゃない?」

「それは流石に目立ちする気がするんすけど……」


「2人の名前はわかっています。男がジョン、女がナオミです。今夜は間違いなく大きなホテルに泊まるでしょうから、ローラ主導で居場所を特定してください。決して本人には接触しないように」

「わかりました。まあ、いいホテルに宿泊するでしょうから候補はそれほど多くはありません。すぐに見つかるでしょう。探偵達を使います」

 そういうとローラはすぐに出て行った。ローラは、情報を集める時は情報屋、尾行や人探しには探偵、内部情報を掴むにはスパイと幅広い情報獲得手段を持っている極めて優秀な人材だ。


「さて、しばらく待機ですね。ローラが戻り次第動き出すことにしましょう」

 数時間後、ローラが戻る。

「見つかりました。最上級ホテル、スピーダに宿泊しているようです」

「すげーとこに泊まってますね。超大金持ちじゃないっすか」

「まあ、見栄もあるでしょうけどね。俺達はこんなにすごいんだぞ、とみせびらかしたいのでしょう」

 感嘆するエフレンと、冷静なシェリー。


「まあ、そうっすね。で、どう動きますか?」

「部屋はわかっているのか?」

「いえ、そこまでは確認できていません」

「となると、入り口を見張るしかなさそうだな」

「探偵にそのまま張り付かせているのでその点は大丈夫です。シェリーさんどうしますか?」


「スピーダは警備が厳しいのでここは正面突破で行きます。本人に話しかけて部屋で話をするようにしましょう。薬物関係の組織のふりをすれば可能でしょう。ランス様と私で行きます」

「なんでリサじゃないのー?」

「貴方が演技が苦手だからです。部屋の中に入るまでは暴れるわけには行きませんので私にお任せください。鎮圧後に貴方とローラを呼びますので」

「はーい、了解」


 ジョンは上機嫌で王都を散策していた。組織が予約してくれたホテルが超高級ホテルの最上階だったからである。

「いやー、あの部屋はすごいな。10人でも泊まれそうだぜ、なあナオミ?」

「ええ、わかってるとは思いますが女を呼んだりしないでくださいね? 仕事前にトラブルを起こしたりしたら問題になりますよ?」

「わかってるって。今日は大人しくするよ。ただ風俗くらいは行かせてくれよ。バサギット王国の女がどんな感じかは気になるからな」

「…… 好きにしてください」

「つれないねえ、じゃあ後でホテルで合流な。よろしくな」


 ジョンはナオミと別れると繁華街へ向かう。まずは街の雰囲気を楽しむために女の子と飲めるお店に行って遊ぶ。それがジョンのルーティンだ。

 

 この国の女は悪くないな、そう考えながらジョンは酒を飲む。声をかけてきた客引きに連れてこられた店は女も綺麗な人が多く、客で賑わっている。ジョンはとりあえず出張で来た商人と偽りながら会話を楽しんでいた。

「ジョンさん、お友達が来ています」

「ん?」

 ジョンが振り向くと、1人の男がこちらへ向かっていた。昔からの知り合いかのように手を挙げて隣に座る。

「お前、誰だ?」

「初めまして。マイケルだ。シンリーアのお客様が王都に来ていると聞いてな、挨拶させて欲しいと思ったのさ。同業者だよ」


「もうバレているのかよ……しかも同業者か。警告か?」

「いや、そんなつもりはないよ。まさかシンリーア相手に喧嘩を売るような馬鹿な奴らとお思わないでくれ。単純にビジネスの話が出来ないかと思ってな」

「ああ、ビジネスか。いいぞ。ただ今は見ての通り遊んでるんだ。3時間後にホテルスピーダの最上階にに来てくれるか?貸切だからそこでゆっくり話をしよう」

「助かる。突然押しかけて申し訳ないな」

「良いってことよ。最初に俺達に気づいて、敬意を示してくれたサービスだ。わかってると思うがビジネスでも敬意を示してくれよ?」

「もちろんだ、期待しておいてくれ」

 

ナオミは目についたレストランに入り、食事を摂る。肉料理はあまり好きではないので、魚料理だ。バザギット王国の王都は食事が美味しいことで有名である。ナオミは王都に来る前から食事を楽しみにしていた。

「うん、美味しいわ。話に聞いていた通りね」

 ワインを片手に1人、食事を進める。ジョンと食事をするくらいなら1人で食べるに限る。ナオミは品性の下劣がジョンが苦手である。仕事の時以外は基本的に別行動にするようにしているのだ。

「どうせ、今頃女遊びでしょうね……」

 そう1人呟いていると、前の席に知らない美しい女が座る。高級レストランによく似合う赤いドレスの、スタイルの良い女性だ。

「誰?」

 ナオミは警戒心を露わに確認する。敵対組織からの刺客かもしれない。


「ああ、ごめんなさいね。私はマリア。貴方、見たところ国外の人でしょ?」

「そうだけど、どうしたの?」

「私、王都から出たことなくてね。国外の人の話を聞くのが好きなの。少し貴方の国について教えてくれない?」

 華やかだがお淑やかな様子のその女は、単純に国外の話を聞きたいらしい。自身の見た目がこの国の人間と異なることはなんとなくわかっている。ナオミは警戒心を下げると、話に付き合うことにする。他人と話をすることは嫌いではない。

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