乗りたまえ、アメリカ製保健室に行こう [シュール]
校庭でふざけていて膝をざっくり切ってしまった。
先生に連れられて、どの保健室に行くのか決めなさいと言われた。
うちの学校には、ネパール調保健室、アメリカ製保健室、インド式保健室、イギリス御用達保健室、カーボベルデ風保健室がある。
保健室に行く前にまずはどの保健室がいいのか選べるのだ。
いや…、選べるのだ…じゃなくて、膝からめっちゃ血でてるから。
とにかく早く僕は保健室に行きたかった。早く保健室に辿りつけるかどうかは賭けだ。
僕はイチかバチかアメリカ製保健室を選んだ。
先生が「じゃあ、用意するから待ってて」と言って膝から下が血みどろの僕を置いてどこかへ行ってしまった。
保健室の仕様は常に変化している。どうやって保健室に行くかどうかも毎回変わるんだ。
ブオンブオンブオンとけたたましい音を立てて廊下の向こうからでっかい車がやってきた。
いわゆるアメ車というやつだ。
「さあ、乗りたまえ」
運転席から先生が顔を出して言った。
僕が助手席に乗り込むと車は猛スピードで走り始めた。
どこまでも真っ直ぐ伸びる砂漠の中の道路をアメ車は走った。
「先生…保健室は遠いんですか?」
「そうだな…アメリカ横断の旅になるかなね…」
僕は今世紀で最も遠い保健室を選んでしまったことを悟った。
先生は僕のために一日中車を運転してくれた。
夜はいかにもアメリカンなモーテルに泊まり、僕たちは4日間かけてアメリカの西海岸に到着した。
先生は車を降りると地図を広げて保健室の場所を探してくれた。
僕の膝の血はとっくに止まって、ガビガビになっていた。
「これは困ったな…」
先生は顎に手を当てて言った。
「どうしたんです?」
いやな予感を全身で感じている僕に先生はこう答えた。
「保健室は東海岸だったようだ…」
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