第27話

ブウウン……


京たちは拠点へと飛ばされた。

京は辺りを見渡す。

京のそばには愛海、ウルハ、手越、盛北の姿があった。


愛海

「今回はみんないるね」


手越

「ここが……スタート地点か?」


彼らは部屋の中にいた。

部屋はいたってシンプルな様相をしていて、真ん中に大きなテーブルが置かれていた。

そして周りには棚や机がいくつか設置されている。

窓も一つあり、カーテンが引かれていた。


愛海はカーテンを開け、外の様子を見る。


愛海

「見てみて!映像で見た防壁がある!」


京たちも窓に近寄り、そこから外を眺める。

そこには防壁が5つ設けられていた。

それぞれ縦横の長さが2m程あり、約1mおきに設置されていた。

防壁を見て京は呟く。


「この壁…なんか意味あるのか?」


手越

「おそらく外からの銃撃や弓矢などの攻撃を防ぐ役割があるんじゃないか?」


「…なるほど」



盛北は窓から離れ、椅子に座る。そして机の引き出しを次々と開けていく。


盛北

「何かあるかな……あっ」


盛北は机の引き出しをあさり、何か見つけたようだ。


盛北

「なんだろうこれ」


盛北はA3サイズの用紙を取り上げる。

そして、それを机の上に広げる。

一同はその用紙を見ようと机に集まる。


愛海

「これ…地図だ」


手越

「本当だ。俺たちは今どこにいるんだ?」


盛北

「ここじゃない?」


盛北が指さしたところは③と記されていた。

地図には他にも番号が印字されていた。


手越

「どうやら各チームの拠点の場所を示しているようだ」


③は地図の左下にあり、右下に①、右上に②、そして左上に④がある。

京は地図を見て頭を傾ける。


「俺たちのチームは②のキーを取りに行けばいいんだっけ?」


愛海

「そうね。2チーム目のキーよ。」


「たしか仁たちのチームか…ここで今までのおかえしをしてやるぜ」


京がそう呟くと盛北もウンウン頷く。


愛海

「後は1番目のチームから身を守らないといけないね」


手越

「そうだな。俺たちの拠点は他に比べると攻められやすい。きっと襲ってくるだろうな」


盛北

「もしくは1番目のチームは要塞がしっかりしているから、もしかしたら引きこもる可能性もあるかも」


「……確かに最初は拠点に籠って頃合いを見て襲撃に来るかもしれない」

「どうする?仁たちももしかしたら俺たちが来ることを見越して籠るかもしれない」


手越は眉を潜め、発言する。


手越

「……しかしな、ここの拠点で敵を待ち伏せしてもキツイだろう」


京たちの拠点は木の防壁が3~4枚あるだけだ。四方八方攻められたら一溜りもない。


愛海

「ここにいたらダメなことはわかるんですけど、かといって仁のチームの拠点の防壁をぶち破れるかどうか…」


「大丈夫だ。あんな壁なんて簡単に突破できる」

「俺のこのワイヤーで防壁なんて軽々超えられるから」


手越はまたポンッと手を叩く。


手越

「なるほど。京のワイヤーを借りれば、防壁を超えて、全員で2チームの拠点へ入れるわけか」


「そうそう。壁を突破して後は力ずくで奴らからキーを奪い取る」

「そっからは力比べだ」


盛北

「うん。確かにここにいたらやられちゃうかもしれないから攻めた方がいいかもね。作戦は決まりだね」


盛北は鬼の形相で窓から外を見上げる。


盛北

「仁……あいつだけは絶対許せない」

その一言はかなり低めの声で発せられた。


ウルハ

「キーはどうするの?攻めたとして取られるかもしれないじゃん」


手越

「ウルハ。お前に任せられるか?」

「お前はまだ子供だが、俺らの中で一番すばしっこいし、機転が利く」

「いざとなったら、キーをもって逃げてもらえばいい」


ウルハ

「…うんわかった!」


しかし、愛海は心配そうな顔でウルハを見ていた。


愛海

「本当にウルハ君に任せて大丈夫?荷が重くないですか?」


ウルハはニカッと笑い、大丈夫だ答える。

手越が愛海の肩にポンッと手を乗せる。


手越

「大丈夫だ。ウルハはできる子だ。これまでもウルハのお陰でここまでこれたのもある」


愛海

「…確かにそうですけど」


手越

「ウルハに任せる分、俺たが全力でキーを取りにいかないといけない」

「キーを取ってしまえば後は逃げるだけだ」


愛海

「…わかりました。ウルハ君に任せましょう」

愛海も手越の説得に納得し、キーをウルハに預けた。


ウルハ

「愛海ちゃん大丈夫。僕速いから」


ウルハはキーを受け取り、ポケットの中にいれ、チャックを締める。


手越は両手を叩き、声をあげる。


手越

「よし!じゃあ地図をもって出発しよう!」

「もしかしたら既に1番目のチームが来ているかもしれないからな」


「よっしゃ行くか!」


京たちは仁がいる2チームの拠点へと向かっていく。


一方、仁たちも拠点で作戦を練っていた。

プレイヤーたちがあれこれ話し合っている。


プレイヤー1

「この防壁なら他のグループが来ても大丈夫じゃないか?」

「ここで籠って、他のグループがつぶし合うのを待つのがいいかも」


プレイヤー2

「いや……ここに籠ったら、それこそ先のグループに越される」

「それにここに良い防壁があっても、それは完ぺきではない」

「ここで何も考えず、籠ることは得策ではないだろう」


大男

「俺たちはあえて3グループのアジトへ行こうか?あそこを襲うことで漁夫の利を狙えそうだ」

「恐らく1グループは3グループの元へ行くだろう。そして4グループは俺たちのところに来るより、1グループを潰しに3グループのところへ行くだろう」

「何故なら4グループも1グループが3グループの要塞へ行くことを見越すはずだ」

「俺たちは1グループと3グループと4グループが衝突するところを見越して、奴らが叩き合っているところを漁夫るんだ」


プレイヤー2

「なるほどな。俺たちは他のグループが衝突した後にキーを奪いに行けば漁夫の利を得られるってわけか」


「いや待て」


仁がその議論に口出しをする。


「恐らく3チームともここに来ることになるぞ」


大男

「何だって?」


「よくよく考えてみろ、盛北のいる3チームは防壁が薄いハズレの拠点だぞ?間違いなくこっちにやってくるだろう」

「それに3グループがここに来れば、自ずと1グループもここに来る。しかし、すぐに来るわけじゃない」

「きっと頃合いを見てさっきの俺たちが話していたように漁夫の利を狙ってここにやってくるだろうよ」

「俺たちと3グループが衝突して疲労しているところに襲い掛かってくることが予想される」


「それと4グループ。あいつらの目的は1グループだ。1グループがここに来るとわかれば、奴らもいずれここに来る」

「4グループは拠点の防壁が無いんだ。じっとはしていないだろうが、奴らにはショットガンがある。他のグループより脅威なのは間違いない」

「奴らも恐らく、しばらくはアジトに待機して1グループが3グループを襲っているところを狙ってここにくるだろう」


大男

「……なるほど。」

「じゃあ、俺たちはここで待機していた方がいいのか?」


「いや、ここにいては鉢合わせになって俺たちは不利となる」

「俺たちはこの拠点の少し離れたところで待機するんだ」


仁は地図を広げ、②と書かれた仁たちの拠点の少し後ろの崖に指をさす。


「ここに見晴らしのいい場所がある。ここならきっと、植松の遠くを見る能力で観察できるはずだ」


植松というプレイヤー

「なるほど……それはいいアイデアだ。」

「しかしなあ、本当に奴らはここに来るんだろうか?」


「それは蓋を開けてみないとわからない。わからないが、このゲームは相手の動きを予測し、的中することで有利になるゲームだ」

「賭けをしなければ、勝利は無い」


プレイヤー1

「うん…俺は仁の意見に賛成だぜ」


プレイヤー2

「俺もだ…!」


大男

「わかったよ。俺も仁に賛成する、その案にかけてみようか」

「これまでも仁のお陰でここまで来たんだ。きっと今度もうまくいくさ」


プレイヤーたちは仁の作戦に賛成し、拠点を出ることにした。

そして後方にある丘へと向かっていった。


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