第152話 永遠の誓い(17)

 だがシロ先輩は、私よりも先のことを考えてくれていたのだ。それがわかると嬉しくなって、思わず頬が緩む。


「シロ先輩はそんなに私のことが好きだったんですね」


 シロ先輩は、からかうような口調で言う私に苦い顔を見せると、ぶっきらぼうに答えた。


「うるせぇよ」


 私から背けてしまった顔が、耳まで真っ赤に染まっているのがわかった。私は、冗談交じりに言葉を紡ぐ。本当は、嬉しい気持ちでいっぱいだ。でも、それを素直に伝えるには恥ずかしかった。


「シロ先輩に結婚願望があるなんて知りませんでした」

「別にねぇよ。ただお前とずっと一緒にいたいと思っただけだ」


 シロ先輩の言葉に、私は、胸が熱くなるのを感じた。


 シロ先輩は、いつもそうだ。言葉足らずで、不器用で、ぶっきらぼうで、口が悪い。だけど、その裏には優しさがある。真っ直ぐな想いがある。だから、彼の発した言葉たちは、いつだって、私の心に響く。


 私がシロ先輩の手をきゅっと握りしめと、シロ先輩は、何故だかそっぽを向いてバツが悪そうに鼻の頭を掻いた。


「本当はもう少し先、クロの気持ちがそっちへ向いてから言おうと思ってたんだけどな。……今日のお前のあんな姿見たら……我慢できなかったんだよ!」


 シロ先輩の本音が意味するところが分からず、私が疑問符を浮かべていると、反応の鈍さに痺れを切らしたのか、シロ先輩がこちらに向き直って言った。


「お前の隣に立つのは、俺以外有り得ねぇ。模擬挙式だろうが、相手役が吟だろうが、他の男にお前の隣は譲りたくないと思った」


 シロ先輩の真剣な眼差しが、私の心を射抜く。


 ああ、そういうことだったのか。


 私は、ようやく理解して、シロ先輩の言葉の意味を噛み締める。自然と笑みが零れた。


 挙式の時に見たシロ先輩の顔が蘇ってくる。あの時のポカンとした間抜け面を思い出して、私は、堪えきれずに声を出して笑う。あれは、花嫁姿の私に見惚れていたということか。


 シロ先輩は、不満げに眉をひそめて、私を見つめる。私は、シロ先輩に寄り添いながら言った。


「シロ先輩。私、今、とても幸せです」


 シロ先輩は、私の言葉を聞くと、驚いた様子を見せたが、やがて優しく微笑んでくれた。


 私たちは、見つめ合って、それから、もう一度キスをした。シロ先輩が、私の髪をそっと撫でる。心地良さに身を預けながら、私は思う。


 ぶっきらぼうだけど優しくて、時に大胆に気持ちをぶつけて来るこの人を、私は、きっと一生愛し続けるのだろう。

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