第34話 それって、まさかお見合い!?(7)
待ち合わせ場所は、ショッピングモールがいくつも点在する繁華街。その中でも一際大きなモールにある中華店だった。
土曜日ということもあり、モール内は大勢の人で賑わっている。その人混みの中を縫うようにして目的の店へと辿り着いた私は、由香里を探す。
彼女はすぐに見つかった。席にすでについていた彼女は、私の姿を見つけるなり、大きく手を振った。
由香里は薄紅色のワンピースを纏っていた。袖口から覗いている手には、淡いピンクベージュのネイルが施されている。艶のある髪には白のレースのリボンが飾られていた。普段とは違った装いだが、とてもよく似合っている。私はそんな彼女を見て、可愛いと思った。
それと同時に、自分の格好を見下ろす。グレーのパーカーと同色のロングのマキシスカート。化粧もナチュラルメイクで済ませている。オシャレのかけらもない、いつも通りの自分。休日なんてそんなものだと思うのだが、自分のラフすぎる格好に、なんだか急に恥ずかしくなった。
店内に入ると、すかさず店員がやってきて席へと案内される。椅子を引かれたが、私はその動作に慣れず、戸惑いながら腰掛けた。
由香里の向かいに座る。彼女がランチセットのページを開いて見せてきたので、挨拶もそこそこに注文をした。
ランチメニューの中から私が選んだのは、麻婆豆腐定食。辛さ控えめにしてもらった。飲み物を聞かれたので、ジャスミン茶を頼む。注文を取り終えた店員が去っていくと、私達はようやく顔を見合わせた。
「ごめんね。勝手にお店決めちゃって。こんな格好だからさ、入れそうな店、限られちゃって」
軽く腕を広げ、開口一番、申し訳なさそうに言う由香里。私は、彼女の言葉を聞きながら改めて彼女を観察した。
服装や髪型が違うだけで、こんなにも印象が変わるのだなと思う。普段はパンツスーツに、しっかりと髪を纏めた姿しか見たことがないから気付かなかったが、今日の彼女は、とても女性らしく見えた。
私は由香里に向かって首を横に振る。
「それは構わないけど、どうしたの? その格好。随分と気合が入ってるようだけど」
素直に思ったことを口にする。すると、彼女は少し照れたように笑って言った。
「婚活パーティーだったの」
一瞬、彼女が何を言ったのかわからなかった。私は思わず聞き返す。
「え? 婚活パーティー?」
由香里はうん、と短く返事をする。そして、少し俯き加減に続けた。
「私、結婚相談所に登録してるんだけどね……」
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