第23話冒険者モノフルオールの受難
冒険者として護衛任務に失敗したものの末路は悲惨だ。
護衛中に命を失った方がまだましというものだろう。
名誉の戦死であればまだ冒険者ギルドが弔って貰える。
だが、護衛対象を殺され、任務失敗ということで(冒険者にとっては多額の)失敗賠償金を払わされることになると、大抵の場合は借金奴隷に落ちることになる。
手傷を負わされ四肢に欠損がある場合は特に悲惨だ。
そんな状況では借金を背負いながら冒険者を続けるということもまずできない。傭兵としても無理だ。誰がそんな人を雇おうというのだ。モンスターもろくに倒せないというのに。
そして、普通の奴隷としても怪我の多い冒険者は扱いに困ることになる。
女性であれば落ちるとすれば娼婦か、性なる奴隷か。
ここで問題があるとすれば、どこかの貴族が大量に女性の犯罪者奴隷を捕まえて市場に流したことだろう。彼女たちはみな美しく、奴隷市場としては大いに受けた。経済的な奴隷ではいろいろと制約が掛かるのだが、犯罪者奴隷は基本的に『何をしても』良い。特に若い男子の貴族の連中にとっては大いに受けるだろう。
そして大量すぎたため、奴隷市場は値崩れが起きていた。
そんなわけで、護衛任務に失敗した全員女性のCランクパーティ《アクティック・アシド》の面々は借金奴隷としては売れず、さりとて性なる奴隷となるにも市場環境が悪いということで売れ残っていた。
剣士のモノフルオール嬢は村一番の魔法使いに教えを受けた少女だ。
魔法使いのアクティア嬢はモノフルオール嬢と同じ村の出身で、村一番の美少女とされていた。
聖職者のクロロ嬢は村から王都に行き、神殿で洗礼を受けたあと村に凱旋してきた少女である。
彼女らは青く着色した青揃えの装備で売り出し中の冒険者であったのだ。
――だが、悲劇は起きる。
商隊の護衛任務中にまるで軍隊のような盗賊団、アイゴー盗賊団に襲われたのだ。
護衛する対象は中規模の商隊で他にも冒険者はいたのだが、それでもさしたる抵抗ができずに倒されるほどの強さを、アイゴー盗賊団は持っていた。
盗賊団らは、まるで次回に本命となる貴族を襲うための訓練でもしているかのように統率した動きで、商隊の馬車を奇襲焼き討ちし、満足したのか去っていった。
途中にいる者は凱旋一周の勢いで排除しながら。
そのため聖職者のクロロは殉職し、モノフルオールとアクティアは生き残りはしたものの、抵抗したためにそれぞれ片手と片足を失っていた。
こうなってしまうともはや、通常のヒールではどうしようもない。
おそらく聖女でも難しいのではないだろうか。
そんな彼女たちを買った酔狂な貴族がいた。
その名をピーチ・グリーングリーン。
グリーングリーン公爵家の令嬢であり、名門の大貴族の一人である。
そのピーチとモノフルオールたちが会ったのは、暗く湿った牢獄と思われる中である。
実に奴隷らしい扱いだな、とモノフルオールは思った。
ピーチは何をする気なのだろうか。
ピーチの横には中肉中背のいやらしい顔をした男がいる。サピエだ。
そして、部屋の隅には簡易なベットが置かれている。
モノフルオールたちは手足を縛られていた。
これから一体何をするのか。
大体の予想がついたモノフルオールたちは嫌悪感に震えた。
「(彼女たちは、この前わたくしとお父様が襲われたときに、どうやら事前の訓練として襲われた商隊の生き残りらしいの――。それで――)」
「(ほう、婚約者たる君はそんな不遇な娘たちをさらに堕とそうというのかね。吾輩におっぱいを揉ませて)」
「(……。あのねぇ。分かっているわよ。あなたが――、そのおっぱいをもみもみすることで聖女すらできない欠損部位の修復ができることぐらい。わたくしが婚約破棄されたとき、異世界の知識を得てわたくしの《鑑定》スキルを真っ先にMAXにあげたんだもの)」
「(ほぅ。君も異世界転生者か。それはそれは――)」
「(それは貴方もでしょう? 貴方のそんな
「(ふふり。ようやく吾輩の魅力に気付いたようだな)」
「(馬鹿言ってないで早く揉みなさい。彼女らを――)」
「(報酬の『おっぱいを揉ませてあげる』というのは、やっぱり彼女らのことか?)」
「(当たり前でしょう? どうしてわたくしが? 中身JKのおっぱい揉みくだすとか犯罪よ。犯罪)」
{(そんなことだろうと思ったよ。――が、彼女たちはいいのかね?)」
「(それは――。ほらこれは治療だから――、最初はもみもみされるのは、メイドにお願いしようと思っていたのだけれどね。
「(なにげにメイドさんへの扱いが酷いな――)」
ひそひそと行われるサピエとピーチの会話。
モノフルオールやアクティアたちから見たら二人がいちゃついているようにしか見えない。
「ではさっそく」
「きゃっ」
逃げることのできないモノフルオールをサピエはベットに押し倒し、さっそくとばかりにそのおっぱいを揉みくだし始めた。
「ちょっと! モノフルになんてことするのよ! 私たちは経済奴隷で、犯罪奴隷じゃないわ! こんなことするなんで聞いてない!」
空しい抗議だな、と思いつつアクティアは抗議をした。
一応の規則では経済奴隷は保護されるということはなっているが、頭では理解しているのだ。
奴隷の末路というのは。
ましてや相手は高位の名門貴族である。
奴隷が何か言ったところで言い分が通るはずがない。
「まぁ見てなさいな、アクティアさんだったかしら? 始まったわよ……」
嫌がるモノフルオールのおっぱいをサピエは無理やり揉みくだした。
相手は拘束され抵抗できずにいる。
「あぁ……。あぁ……」
モノフルオールの嬌声が徐々に大きくなり、そして小さくなったころだろうか。
その目はぐったりとしたものになっている。
だが、どうしたということだろうか。
サピエが十分に堪能し、モノフルオールの身体から離れた時――
モノフルオールの身体がほのかに光っているのにアクティアは気付く。
薄暗い牢屋の中、その光は嫌でも目立った。
サピエが呟く。
「ふふ。おっぱいの奇跡ですぞー」
「あぁぁ――。一体、何が起きて……」
そのとき、ほのかな光が失った右手に集まっていくのがアクティアの目に映る。
「あぁ……、手が……、手が……」
すると、いつのまにかモノフルオールの手が復元していたのだ。
アクティアの目が見開かれっぱなしになるのは当然のことであろう。
「説明しよう。身体的に最も適した生活水準の達成を可能とするリハビリテーションの極致、胸の大きさがワンカップ小さくなるのと引き換えに欠損部位を治す。それが≪おっぱいヒール≫! ようするに、『寄せて上げる』という行為の反対のことをするわけだ――」
どや顔でサピエは言うが、ピーチ・グリーングリーンは心底あきれた顔をしていた。
「スキルの名前としては恐ろしく酷いけれど、効果としてはチート以外の何物でもないわね……。さすがは勇者誕生のオチに使われるほどのネガティブクラスだわ」
モノフルオールは涙を流しながら手が復元されたことを喜んだ。
うつろな瞳が完全に元に戻っている。やる気のある瞳へと。
「あ、ありがとうございます……」
それはそうだろう。失われたものが復活したのだから。
そんなモノフルオールに対して満足そうにうなずいたサピエは、次のおっぱいとばかりアクティアの方に振り替える。
「それで、君は……」「ひぃ……」
その怪しさにアクティアは悲鳴をあげた。
あれは確かに癒しなのかもしれないが、そこには邪神の波動、邪悪な欲望というものしか感じられなかったのだ。
「君は――、片足の欠損か……。容積がおおきいからワンカップじゃ足りないかもしれないなぁ……。Cか……。おそらく……。Aになるかもしれないが、それでもやるかね?」
一体何が絶壁になるのか、今までの行為からアクティアは何がそうなるかは理解したが、しかし選べる選択肢は無かった。
足が復活すれば冒険者として再び活躍できるかもしれない――
「お、お願いします……」
そして、アクティアはその身をサピエに許したのだ――
・ ・ ・ ・ ・
一方そのころ――
「「1、2、3、4……、たくさん!」」
素敵なメイドさん、マイヤー・ロッテンによるリナたちの調きょ――、もとい教育が始まっていた。
マイヤー・ロッテンさんの掛け声で、まずは10進法の訓練をしているが、リナたちは覚えることができるのだろうか?
四則演算と文字の学習など、一般常識を教えるにはまだまだ先が長そうであった。
だが、リナはやる気だ――
(あんな、権力ぶった女になんかに私は負けない――、そう権力よ! 魔王程度じゃまだ権力として足らないのかしら……。そう、モンスターの頂点たる魔王、その魔王の頂点の存在になれば!)
そんな中、リナの思想はさらに過激な方向へと突き進んでいく。
(そう、魔王というだけでじゃ、サピエはリナに振り向いてくれなかったわ。だったら、その上の存在――、大魔王とかどうかしら……)
システム:「強欲之魔王たる魔王リナによって、大魔王になる申請が行われました」
システム:「暴食之魔王たる魔王ベルが大魔王申請を承認しました」
システム:「色欲之魔王たる魔王エディプスが大魔王申請を拒否しました」
システム:「怠惰之魔王たる魔王ベルフェが大魔王申請を拒否しました」
システム:「傲慢之魔王たる魔王フアトロが大魔王申請を拒否しました」
システム:「激情之魔王たる魔王ジャックが
システム:「暴食之魔王たるベルが
システム:「色欲之魔王たる魔王エディプスが
システム:「怠惰之魔王たる魔王ベルフェが
システム:「傲慢之魔王たる魔王フアトロが
システム:「『イベント
システム:「傲慢之魔王たる魔王ベルが、課金アイテム『システムに書きこーむ』を使用しました」
システム:「『イベント
時間は4週間後、期間は土曜日のゴールデンタイム(20:00-21:00)。
場所は駆逐飛空艦、奇城
皆様、幹部2名までをお誘いあわせの上、参加をお願いします――』」
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